松下幸之助は経営を「学べる」と考えなかった 経営学は学べても、経営は学べない

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PHPの理念に即しているか、雑誌や単行本をいつも自分で確認していた(写真:_human / PIXTA)

松下幸之助は、PHP研究所のPHP活動(Peace and Happiness through Prosperity、繁栄によって平和と幸福を)が基本理念から外れていないか、年々増大する雑誌、単行本を一点一点いつも自分で確認した。

雑誌はまず表紙を見て、目次を見る、そして適当に開いたところを読む。どこを読むのかはそのとき次第であるから、前もって手を打っておくことはできない。いくつかの掲載文を読んでは、よし、PHPの理念に即しているというような様子で頷きながら、「ええやないか」と言うのが常であった。

雑誌に掲載される広告にも関心

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月刊誌「Voice」の広告にも強い関心を持っていた。広告を出していただいた会社を、ページをめくりながら一つひとつ確認しては、ここは先月も出してくれておったな、ここは初めてやないか、というようなことを話かけてくることもあった。よく覚えているものだと内心感心することが多かった。

単行本も同じような確認の仕方であったが、表紙、目次を見てから、著者がどういう人なのかをよく尋ねられた。それから、私はその本の前書きと後書きを読まされ、最初の数ページを読まされた。PHPの考え方から大きく逸脱していないか、矛盾していないか、確認していたのである。

私が経営者として担当しはじめのころは、雑誌が二点ほど、書籍の発刊点数もわずかであったから、松下の確認もそんなに時間はかからなかった。しかし、だんだんと点数が多くなってくると、書籍は適当に間引いて報告するようになっていった。松下のPHPに対する基本の考え方はよく理解しているつもりであったから、内心任せてくれればいいという思いがあった。

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