節電・省エネで脚光、我慢不要の「スマートビル」 清水建設本社など続々
福島原発事故から2度目の夏が過ぎようとしている。東京電力「でんき予報」によれば、8月30日午後2時台の電力使用見通しは5087万kWで、供給力との比率では93%という「やや厳しい」状況。ただ、昨年5月に資源エネルギー庁が公表した最大ピークの電力供給力6000万kwとの対比では2割弱の“節電”を達成できている計算だ。
この節電に貢献したのがオフィスの電力使用、つまり「業務用」の節電対策だ。資源エネルギー庁の試算では、6000万kWのうち業務用が占める割合は実に2500kWで、全体の4割強を占めていた。
東京23区だけで約1.6万棟がテナント募集中とされるオフィスビル。その大半は築年数の経った中小ビルで、入居者が不要な照明を消したり、エアコン設定温度を28度に設定するなど、我慢に我慢を積み重ねながら節電に協力してきた成果は見逃せない。
ところが、暑さを我慢しなくても快適に業務ができる「スマートビル」と呼ばれる究極の省エネビルが都心に登場。国内外から行政関係者や建築士が見学に訪れている。
8月に竣工したばかりの清水建設本社ビル(上写真)がそれだ。東京都中央区京橋の昭和通り沿いに完成した同ビルは地上22階建て。二酸化炭素(CO2)排出量を、都内の事務所ビルの2005年平均に比べて62.6%削減できるという。
空調については輻射天井に冷水を供給するシステムを導入、エアコンのような天井からの送風はない。照明器具についてはLEDを採用し、柱の少ないフロア全体が美術館のような薄暗さを感じる。ただ、作業デスクには送風や照度を調節できる工夫がなされており、むしろ従来のオフィス環境よりも個人差への配慮が見て取れる。