節電・省エネで脚光、我慢不要の「スマートビル」 清水建設本社など続々
ユニークなのは、ガラス窓に多結晶と薄膜の2タイプの太陽光パネル(962枚)を埋め込んで自家発電を行っている点だ。この発電でビル内の昼間のLED照明を賄えるという。外部から電力供給が途絶えても、太陽光で蓄電された内部電力を消費する非常時対応機能が備わる。ビル壁面に太陽光パネルが施工された高層ビルとしては、設計思想は異なるものの、横浜ダイヤビルに続いて、清水建設本社ビルが国内で2番目とされる。
なにせ、オフィスビル受注でゼネコン業界首位の清水建設が、自ら発注者かつ施工業者となって建設した高層ビル。同社自ら「ショールーム」と呼ぶように、耐震と省エネ、業務効率、IT化、利便性などの工夫が全フロアに施されている。この究極の「スマートビル」には、シンガポールを筆頭に東南アジアや米国西海岸など、年間日射量が高い地域で活動するビル関係者からの、高い関心が寄せられており、同社の海外受注増につながるとの期待が膨らんでいる。
清水建設本社ビルで使われている多結晶太陽光パネル
ただし、国内で清水建設本社ビルのような究極の省エネビルを実現するには、立地はもとより、建設資金の制約もありそうだ。設備設計を担当した清水建設の責任者も、ビル壁面を活用した太陽光発電の費用対効果について、明言は避けたものの、「投資回収に10年以上かかる。パネル単価が下がらないかぎり国内での普及は難しい」と本音を打ち明ける。
また、同ビルには、行政に対して数々の特例措置を申請し、それが承認されて初めて実現にこぎ着けた設備が多い。ビルの建設に当たって、環境性能に配慮したものや公共貢献が認められるものであれば、容積率の割り増しを認める「総合設計制度」などだ。