節電・省エネで脚光、我慢不要の「スマートビル」 清水建設本社など続々
“スマート投資”できない中小事業者は置いてきぼり
清水建設本社ビルほどではないとしても、東京都心では「スマートビル」の建設ラッシュが続いている。東京都環境局によると、「都内でここ2~3年に竣工したオフィスビルの4~5割が(省エネなど)環境性能で最高ランク」(環境都市づくり課)という。一部の資金力がある大手事業者は、既存ビルを、CO2排出を抑えた低炭素化ビルに建て替え、自社ビルとして活用したり、テナントを募って不動産収益を増やしているのだ。
このため、東京駅前や大阪駅前は、高層ビルの建設ラッシュで「ミニバブルと言っていい」(不動産融資担当者)状況だ。東日本大震災以降、大地震への備えから、老朽化した本社ビルを建て替えたり、本社代替のために大阪や名古屋のオフィス機能充実を計画したりする動きが続いている。
一方で、築年数が古い老朽ビルの入居者は、エアコン設定温度を28度に設定するなど我慢を重ねて、節電に協力をしているのが実態だ。「米国より1度以上高めの設定温度は、労働生産性を阻害するという科学データがあるのに行政は問題視しない」(ビル業界団体幹部)との指摘もある。
とはいえ、中小ビル事業者が、「スマートビル」への建て替えや大型改修のための資金調達を行うのは困難と言わざるをえない。「テナント賃料が低水準のままで、テナントに改修分の賃料上乗せを提案などできる立場にはない」(不動産融資担当者)からだ。
ならば、こうした中小ビル事業者と大手ビル事業者のハンディキャップを埋める行政の支援制度が求められるだろう。ビル業界団体幹部も、「行政の役割としては、収益や財政面で厳しい中小ビルの建て替えや改修等の支援によるCO2削減の指導に重点を置くべき」と主張する。
ちなみに、東京都環境局は都内の中小ビル事業者向けに支援制度を設けているが、ビルオーナー側の活用は一部業者に限られている。行政が省エネ推進の規制や支援制度を設けても、「行政手続きの事務量が増えるだけ」(ビル業界団体幹部)と、ビルオーナー側に敬遠ムードがあるようだ。