しかし、「『日本型軽減税率制度』は、本当に使えるのか 財務省が示した『還付型』の問題点とは?」でも触れたが、簡素な給付措置での低所得者対策は、税制抜本改革法第7条に記されている1つの候補でありながら、自民党と公明党は検討対象として取り上げなかった。
こうして、12月16日に自民党と公明党は、「平成28年度税制改正大綱」を正式決定し、2017年4月から軽減税率を導入することが盛り込まれた。この大綱は年内に、閣議決定されることとなる。
「平成28年度税制改正大綱」には、「軽減税率制度の導入に当たり、財政健全化目標を堅持し、安定的な恒久財源を確保する」と明記された。これについては、特に自民党側で、軽減税率の対象品目が大幅に広がったことで2020年度の財政健全化目標の達成が懸念されることを反映した記述と言える。同大綱では、軽減税率導入によって失われる税収に相当する財源については、「平成28年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずることにより、安定的な恒久財源を確保する」とも明記された。
軽減税率導入で失われる税収は約1兆円
ただ、逆に言えば、軽減税率導入に伴い穴埋めする財源の決定は、2016年度末まで先送りされたともいえる。確かに、実際に軽減税率導入を予定しているのは2017年4月からだから、2017年3月末までに決めれば間に合うかもしれない。とはいえ、2017年1~3月は、通常国会で2017年度予算案と予算関連法案の審議があるから、事実上2016年12月末までに、政府・与党で安定的な恒久財源をどう確保するか、決めなければならない。軽減税率導入によって失われる税収は約1兆円とされる。そのうち、今般の軽減税率導入論議の際に提示された財源は4000億円とされ、残りの6000億円が未決定となっている。
現時点で出ているうわさでは、財源の候補として、たばこ税、相続税、所得税などが挙がっている。社会保障給付をさらに抑制してこの財源の大半を工面するとなると、社会保障財源を確保するための消費税増税という根拠を失いかねない。「霞が関埋蔵金」めいたお金は、そもそももう払底しているのだが、あっても一時的な財源にすぎず、「安定的な恒久財源」ではない。
消費税の軽減税率によって失われる税収の穴埋めを、他の税で工面するなら、「安定的な恒久財源」となりうる。ただ、たばこ税だけで残りの6000億円のすべてを賄えるような税収が得られるとは考えにくい。
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