自民党と公明党は12月12日、生鮮食品および加工食品(酒類および外食を除く)を消費税の軽減税率の対象品目とすることで合意した。次いで、同14日には定期購読契約を結んだ日刊新聞も軽減税率の対象品目に加えることで一致した。
軽減税率導入を巡る今般の駆け引きは、税理論から完全にかけ離れたものだった。大半の財政学者は、軽減税率に一貫して反対していた。本連載でも「消費税軽減税率は、低所得者対策にならない 集団的自衛権と軽減税率問題は、独立して考えよ」で取り上げたが、拙稿の予想通り(残念ながら)、公明党が安保法制で妥協したこととのバーターで、軽減税率導入が進められている。
「低所得者に配慮する観点から」不適切な理由
そもそも、軽減税率は、2012年8月に成立した社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(税制抜本改革法)の第7条に基づいて、1つの候補として導入が検討されたものだった。税制抜本改革法第7条には、「低所得者に配慮する観点から」検討する旨が記されている。
しかし、軽減税率は「低所得者に配慮する観点から」みて不適切な政策手段である。軽減税率の対象品目は、高所得者も購入でき、かつ購入額の面では低所得者より高所得者のほうが多い。したがって、軽減税率の適用によって失われる税収は、高所得者が軽減税率を適用することでも生じてしまう。もし、軽減税率を適用せずに高所得者に標準税率で課税して得られた税収があれば、それを財源にさらなる低所得者対策が可能となるはずだが、その機会を逸してしまうことになる。
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