消費税の軽減税率導入についての議論が、風雲急を告げている。このほど、消費税の軽減税率に関する財務省の案「日本型軽減税率制度」が、与党に示された。「軽減税率の還付金、『上限4000円』検討のワケ」(日テレニュース24)でも報じられた通りである。これまでに、東洋経済オンラインの本連載でも、拙稿「消費税軽減税率は、低所得者対策にならない」でもこの問題を取り上げた。
なぜ軽減税率の自公合意はできなかったのか
事の経緯はこうである。もともと、消費税の軽減税率導入に対して、自民党は消極的、公明党は積極的だった。
そんな中、消費税率を10%に引き上げる時期を2017年4月に先送りした上で臨んだ昨年末の衆議院総選挙で、与党は足並みをそろえて「軽減税率制度を税率10%時に導入する」と公約に掲げた。今年に入り、自民党と公明党は共同して消費税軽減税率制度検討委員会を設け、軽減税率制度を検討したが、両党が合意できる案がまとまらず、6月10日に協議を中断することを決めた。
両党が合意できなかった理由は、欧州諸国で導入されている軽減税率と似た仕組みにすると、問題が続出したからである。
まず、軽減税率を適用する対象品目の選定には、政治的にも実務的にも困難に直面すること、対象品目を幅広く設けると失われる税収が多く財政収支が改善しないが、対象品目を狭くすると消費者が税負担軽減を実感しにくいというジレンマに陥ることなどがあげられた。
さらに、徴税を適正に行うにはインボイスが欠かせず、流通の全過程でインボイスを適正に受け渡しできるようにするには事業者の事務負担が増えること、そもそも低所得者対策として導入するのに高所得者まで恩恵が及んでしまい政策目的になじまないこと、といった問題である。
だが、それでも公明党はあきらめきれなかった。
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