時間に甘い人は、30代以降を乗り切れない 厳しい時間感覚が、人生をぐっと豊かにする

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この時間に関する感覚を私に叩き込んでくれたのは、私が30歳を過ぎてから出会った元上司で、尊敬してやまない人です。「夜は集中力がなくなって仕事にならない」と言いながら、誰よりも早くさくっと帰ってしまいます。それでもぎっしり詰まったスケジュールは次の日に繰り越すことなくその日中に終わらせてしまう。そして、雪の日も大雨の日もほぼ変わらず、始業30分前に、元気いっぱいに「おはよう」と出社してくるのです。

多くの仕事に「追われる」のではなく、コントロールしていく力は、この厳しい時間感覚から生まれるのだと教えてくれ、当時の管理職の中で断トツの生産性を誇る人でした。

彼の部下だった頃、「今、ちょっといいですか?」と相談を持ちかけると、彼は「15時から15分ならいいよ」と答えて、スケジュールを決めさせたものです。すぐに手を止めて相談を聞き、「これだけじゃわからないなぁ、あの資料を持ってきて」などと言いながら「ちょっと」のはずの会話が30分になり、お互いに後の予定が狂うなんていうことは、まったくありませんでした。どういう意図か聞いてみると、「始まりと終わりの時間をきちんと決めておくことは時間を守る基本だ」と言っていました。

平気で遅れる人は時間を泥棒している

「会議に、2~3分遅れてくる人は、出席者の時間を泥棒する人だ」とも言っていました。ある時、なんということか寝坊してしまって会議に遅れ、普段は穏やかな彼に、みんなの前でめちゃくちゃ叱られたことがあります。後日、「数年一緒に仕事していて初めての遅刻だったのに、あんなに叱らなくたって」と笑い話にしたところ、「そんなお前だから、あえてみんなのために叱ったんだ」と言われて、心にしみた記憶があります。

そんな目で周囲を見渡すようになると、出社時間に遅れがちなメンバーは、夜帰るのも遅いことが多いことに気づきました。ほぼ毎日息を弾ませて出社してきて、いつも1、2分くらい遅刻するメンバーがいたのですが、その理由を聞くと、「会社の前の信号がいつもより早く赤になって渡り切れなかった」とか「カバンの中のSuicaがひっかかって改札で取りだせなかった」とか「会社のエレベーターがアホすぎてなかなか来ない」とか言うのです。

雨が降って電車が少し遅れたりすれば、もちろん必ず遅刻です。そうやってほんの少し出社時間が遅くなり、仕事の開始が遅くなり、アポをずらさざるをえなくなり、夜にその後始末をするために残業をすることになる。予定より10分前に家を出ていれば、ほとんど解決できるのに! そのメンバーは「何事も緩い人」という不名誉なレッテルを貼られてしまい、生産性もどんどん低くなってしまったのでした。

次ページでは、なにから取り組めばいいのか
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