目標より習慣が大事 普遍性の高い学びを--『21世紀のキャリア論』を書いた高橋俊介氏(慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)に聞く
「想定外変化と専門性細分深化の時代」のキャリアデザインはどうあるべきか。21世紀型に作り変えるには「キャリア自律」がますます必要になっているという。
──「キャリア自律」がキーワードですか。
会社任せでなく、自分で自分のキャリアを切り開くことだ。
今やキャリアが不安定化し、とかく想定外になってくる。その一方で深い専門性も重要だ。その状況の論点を、個人の視点ばかりでなく人を育成しマネージする会社の視点、社会の視点から整理した。
日本では、産業化社会の管理可能性や予測可能性を高めたやり方が、そのよさを評価されて、私生活を含めてありとあらゆる分野にしみ付いた。それが、ゴールを明確に定めて、逆算して無駄なくそこに向かって行くのがいいという、産業化社会的なキャリア形成に出ている。ところが、すべてにおいて想定外のことが起こるような21世紀には、キャリア環境自体が違ってしまった。
問題は雇用の不安定性にあると考えるかもしれないが、そうではなくキャリアの不安定性こそを考えるべきなのだ。確かに大企業のホワイトカラーは自分なりにキャリアを積み上げている。しかしそれが通用せず、突然崩れてしまうようになった。その際、ただ仕事があればいいのではなく、キャリアが不安定化して、その形成のうえで何が大事になるのかが問われている。
──とかく予定どおりでないと、クレームをつけられる時代です。
その一方で、たとえばアウトドアで自然を楽しむようなものは、予期せぬことがあるからこそ楽しい。人間の豊かさは予定どおりでないところにもたくさんあるわけで、キャリアのあり方でも、想定外のことが起こっても余裕を持って受け止められるようにしたいものだ。