激務の男性が、恋人と結婚を決意する「瞬間」 38歳アニメーターの「律儀なプロポーズ」

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育ちが良くておおらかな性格の早苗さんは結婚してもマイペース。一方で、哲也さんはダメ人間どころか「しっかり者の奥さん」と化している。

生まれてくる男の子は、きっと父親に似る

「お財布はもちろん僕が握っていますし、買い出しも僕がほとんどやっています。そのへんの主婦に負けないぐらいスーパーの売り場に詳しいですよ。農家の即売所まで1時間ぐらいかけて自転車で行き、とれたての野菜を安く買ってくることもあります。奥さんに対しては、『栄養バランスをちゃんと考えて料理して』とか『時間があるなら掃除して!』なんて注意しちゃいます。これを言うと妻が怒るのですが、大きな娘と暮らしている父親の気分ですよ」

などとぼやきながら哲也さんは幸せそうな笑顔を隠せない。想定外の行動や受け応えをする早苗さんとの生活を心底面白がっているのだ。

最近の早苗さんは、哲也さんの小言を聞き流して上手にいなすことを覚えたらしい。同世代の女性だったら哲也さんの細かさにイラ立ってぶつかっていたかもしれない。

現在、早苗さんは男の子を妊娠中であり、この原稿が記事として掲載される頃には哲也さんは父親になっている予定だ。アニメーターとしての腕には自信があるものの、責任感が強くて心配性な哲也さんは心労が絶えない。

「子どもが産まれて夜泣きで眠れなかったら仕事に支障をきたします。妻子とは別々に寝るしかないでしょう。育児も家事も妻に本気を出してもらわなくては回りません。どうしようもない場合は田舎にいるどちらかの両親に来てもらうことになるでしょう。ああ、今から心配です」

親の背中を見て子は育つ。特に、同性の親の影響は大きい。20年後、哲也さんと早苗さんが育てた男の子は、家事もバッチリこなせる優しくて働き者の青年になっている気がする。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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