「インタビューは僕でよければお受けします。現状の生活サイクルでは『平日の12~13時の間』という制約がありますが……(汗)。この条件でよければ受けさせていただきます。そんなに面白いネタはないかもしれませんが。ご検討いただければ幸いです」
テレビ局の管理部門で勤務する鈴木恭一さん(仮名、47歳)から取材OKの返信が来た。プライベートの時間を確保できるのはランチタイムだけらしい。理由は仕事の忙しさではない。終業時間を迎えたら脇目も振らずに帰宅して、専業主婦をしている妻に代わって3歳と1歳の娘たちをお風呂に入れるからだ。
晩婚さんにして新婚4年目の鈴木さんは、父性愛に目覚めたのだろうか。勤務先近くのカフェで待ち合わせをした。まずは長い独身時代について聞きたい。
実父の死で思い知った「僕はひとり」
「30代半ばを過ぎると同世代はだいたい結婚して子育てを始めるので、独身だと特に週末はひとりで暇ですね。だから、昼からビールを飲んじゃいます。飲み干した缶を積み上げてトーテムポールを作るのが趣味だったのですが、5、6本重ねると倒れちゃう。その頃には僕も酔っ払って倒れちゃう。タハハハ……」
すぐに崩壊する空き缶トーテムポール制作を趣味と呼べるのかは微妙だが、独り暮らしの様子と自虐笑いの才能は伝わってくるエピソードである。そんな恭一さんが初めて寂しさを覚えたのは10年前、地方の実家に住んでいた父親が他界したときのことだ。
「母はずっと寝たきりで姉たちが引き取って世話をしています。葬式では親戚も集まったのですが、式が終わるとそれぞれの家庭に帰っていく。親父がいなくなった実家に僕がひとりで泊まり、『俺にはもう帰る場所がないんだな』と痛感しました」
姉たちからは「お母さんの面倒は見るけれど、お前の面倒は見んからな!」と宣言された。恭一さんは恋愛や結婚に関心がなかったわけではない。大学時代からの男友達と10年以上にわたって合コンを繰り返していた。
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