「入院しない程度まで全力を尽くしてね、という雰囲気です。彼女と家が近いのが幸いでした。デートする暇はありませんでしたが、僕の仕事が終わったらうちに泊まりに来てもらうことができましたから」
忙しさに追われて3年が経過した頃、早苗さんから「一緒に住みたい」と伝えられた。自宅と哲也さん宅を往復することが面倒に思えてきたのだろう。仕事に気を取られていた哲也さんが「近くに住んでいるんだから今のままで問題ないんじゃない?」と何気なく答えると、早苗さんは怒りだした。どういうつもりで自分と3年間も付き合って来たのか、と。
同棲するなら結婚!律儀さが結婚のきっかけに
「そのまま彼女は家に帰り、しばらく連絡が取れなくなってしました。僕もようやくちゃんと考えましたよ。仕事を言い訳にしてフラフラと付き合って来たけれど、彼女を手放すことは考えられないと気づいたんです」
仕事が忙しくてプライベートが疎かになっている人を結婚へと導くのは、恋人や家族によるショック療法しかないのかもしれない。
ただし、「臆病な田舎人間」を自認する哲也さんにとって、勝手に同棲することなどはありえない。一緒に住むのであれば早苗さんのご両親に挨拶して許可を得ようと決心した。同棲イコール結婚なのだ。哲也さんは臆病ではなく律義だと筆者は思う。
今度は早苗さんが驚く番だった。自分はまだ24歳。甘い同棲生活を思い描いて駄々をこねたところ、哲也さんは何を勘違いしたのか両親に会いに行くという。それでは結婚になってしまうではないか。しかし、早苗さんも覚悟を決めた。
「じゃあいいよ、がプロポーズの答えでした(笑)」
哲也さんは婚約とほぼ同時に独立することも決意。経済的には不安が伴うが、激務すぎる会社から離れて人間らしい生活をする時間を確保できるようになった。
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