月に降りないのに"歴史的"──約54年ぶりの有人月周回「アルテミス2号」が、月面基地と資源競争の前に確かめる決定的な意味

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オリオン宇宙船は2022年11月のアルテミス1号ミッションで、最初の宇宙飛行を行った。無人で行われたこのミッションでは、データ収集のために各所にセンサーを取り付けられた3体のマネキン人形がシートに着座・固定され、ミッションコマンダーの席に着いたマネキンは「ムーニキン・カンポス船長」と呼ばれた。また船内には、カメラ映像から無重力状態になったことを知るため、「スヌーピー」のぬいぐるみと、サービスモジュールを提供したESAに敬意を表して「ひつじのショーン」のおもちゃが置かれた。

この無人ミッションで最も重要な試験項目だったのが、月から地球への帰還における、時速約4万kmで大気圏に再突入する際に発生する約2200℃という高温に耐熱シールドが耐えられるのかという点だった。

アルテミス1号ミッションを終えて帰還し、回収されたオリオン宇宙船の底面には、耐熱シールド表面が複数の場所で剥がれ、焼け焦げた状態になっているのが発見された。

回収されたオリオン宇宙船の底面
回収されたオリオン宇宙船の底面(画像:NASA)

NASAはこの問題について2年におよぶ徹底的な調査を行った。2024年に発表された報告書によると、耐熱シールドの脱落は、シールド内部に発生したガスが加熱によって膨張したせいで、シールド表面にひび割れが発生したことが原因となり、そのうち数カ所で焼け焦げ、一部が剥がれ落ちる現象に至ったというものだった。

そして、カリフォルニア州にあるNASAのエイムズ研究センターでアルテミス1号の再突入時の環境を再現、さらに激しい加熱環境においても実験を実施し、耐熱シールド内のガス圧が高くなりすぎる前に、適切に放出されるように改善を施した。

なお、アルテミス2号ミッションでは、オリオン宇宙船の耐熱シールドを交換する代わりに、降下角度を大きくすることで再突入軌道を変更し、宇宙船が損傷に関連する熱環境下で過ごす時間を短縮する。NASAはアルテミス1号のままの状態でも、カプセル内の飛行士たちが安全に帰還できていたということを検証済みだとしている。

打ち上げに使われるのは大型ロケット「SLS」

アルテミス2号の打ち上げに使われる大型ロケットSLSは、そのオレンジ色のコアステージ部分に、スペースシャトルの打ち上げで使用された外部燃料タンクから得られたノウハウを活用した設計を採用している。また、最下部にある4基の「RS-25 D」エンジンも、スペースシャトルのミッションをルーツとする。

打ち上げを待つアルテミス2号
打ち上げを待つアルテミス2号(画像:NASA)

とはいえ、スペースシャトルの名残は全体に及ぶわけではなく、コアステージの推進剤タンクをはじめとする各所の構造は大きく異なっている。コアステージの脇を固める固体ロケットブースターも、スペースシャトルで使用されたものから制御系統を一新、ケーシングセグメントが1段増え、推力を25%増強している。

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