月に降りないのに"歴史的"──約54年ぶりの有人月周回「アルテミス2号」が、月面基地と資源競争の前に確かめる決定的な意味

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また、アルテミス2号にはドイツ、韓国、サウジアラビア、アルゼンチンの各宇宙機関が開発したキューブサットが搭載され、打ち上げ後に地球周回軌道に投入する予定だ。これらのなかには月面探査とは直接関係しないものもある。

オリオン宇宙船

オリオン宇宙船はクルーモジュールとサービスモジュールで構成され、飛行士たちが乗り込むのはクルーモジュール、一般的にカプセルと呼ばれる三角錐型の部分だ。ロッキード・マーティンが建造するこのカプセルは、生命維持装置、航空電子システム、電力システム、耐熱保護システムを備える。

同じ三角錐型であることから、アポロ宇宙船と同じように見えるかもしれないオリオン宇宙船のクルーモジュールだが、比較すると直径が約1m大きく、アポロ宇宙船より1人多い4人の宇宙飛行士が、打ち上げから帰還まで最大21日間のミッション中に滞在するスペースを提供する。

また、オリオン宇宙船は床面の下に大型の収納スペースがあり、万が一太陽フレアなどの放射線事象が発生した場合は、遮蔽材として機能する高密度素材で形成されるこのスペースに避難するようになっている。アポロ時代には、太陽フレアによる放射線やそれによる人体や機器への影響は考慮されていなかった。

当然ではあるが、機体内部もアポロとは比較にならないほど近代化されており、飛行士はそのときどきに必要な情報やガイダンスを提供する3つのグラフィカルなディスプレイを見ながら機体を操る。そのため、映画『アポロ13』に見られるような、バインダーにとじられた紙のマニュアルをめくって制御方法を確認するようなことはないはずだ。

オリオン宇宙船内でディスプレイパネルを操作する飛行士
オリオン宇宙船内でディスプレイパネルを操作する飛行士(画像:NASA)

飛行士が使用するディスプレイは、SpaceXのクルードラゴン宇宙船のようなタッチスクリーンを多用したものではなく、航空機の流儀を色濃く反映したものとなっている。3面のディスプレイには、それを取り囲むように配置された約60の物理スイッチ、2つの回転式ハンドコントローラー、2つの並進式ハンドコントローラー、そして2つのカーソル制御装置がある。ただし、物理的なスイッチ類は、一目見るだけで各機能の状態が把握できるという利点もあり、一概にタッチパネルに劣るとは言えない。

一方、クルーモジュールの台座部分として、オリオン宇宙船に推進能力を提供するのがサービスモジュール(正式名称はEuropean Service Module : ESM)だ。こちらは欧州宇宙機関(ESA)とエアバス社によって、国際宇宙ステーション(ISS)に5度にわたり物資を輸送した欧州補給機(ATV)の技術とノウハウをベースとした後継機として開発された。

33基の大小様々な推進エンジンを搭載するサービスモジュールは、オリオン宇宙船の原動力として、宇宙空間を航行するための推進力のほか、電力、空気、水、熱制御といったライフラインを供給する。

電力システムは太陽光パネル4枚を用い、11.2kWの電力を発生することが可能だ。これはアポロ司令・機械船の約2倍に相当する。

アルテミス1号ミッションを終え着水するオリオン宇宙船
アルテミス1号ミッションを終え着水するオリオン宇宙船(画像:NASA)
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