月に降りないのに"歴史的"──約54年ぶりの有人月周回「アルテミス2号」が、月面基地と資源競争の前に確かめる決定的な意味

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月には、基地での生活に不可欠で、燃料に転換が可能な水をはじめ、レアアース(希土類)、鉄やチタン、そしてヘリウム3などが存在すると見られている。特にヘリウム3は、将来的に核融合発電に利用できる可能性があるものの、地球上では通常のヘリウム4に比べ100万分の1しか存在しないため、希少ガスとして高額で取引されている。もしこれが月面で採取できるとなれば、莫大な利益を生み出す可能性があるのだ。

アルテミス2号ミッションの役目

アルテミス2号は、冒頭に述べたように宇宙飛行士を約54年ぶりに月周回軌道へと送り出すミッションとなる。しかしこのミッションでは、まだ月面への着陸は行わない。アルテミス2号は、2027年以降に行われるアルテミス3号ミッションでの有人月面着陸と地球への帰還を、安全に遂行するための基礎を築くことを目的としているからだ。

アルテミス2号ミッションは、簡単に言ってしまえば、宇宙飛行士を月の周回軌道まで連れて行き、地球へ戻ってくるだけだ。ただ、これはオリオン宇宙船にとって初の有人飛行になる。そのため、生命維持システムや通信装置、航法装置、熱制御装置などが実運用下で正常に機能することなど機体の安全性全般を検証し、後に続くアルテミス3号で予定される月面着陸に向けた、修正点や改善点の洗い出しがこのミッションの重要な側面となっている。

アルテミス2号ミッションのインフォグラフィック
アルテミス2号ミッションのインフォグラフィック(画像:NASA)

月面着陸を実施しないせいで地味に見えるのは否定できないが、将来的な月面基地建設や、その先にある火星への有人探査の布石となるこのミッションは、むしろアルテミス計画の今後のために重要な役目を果たすものと言えるだろう。

なお、アルテミス2号ミッションでは、乗組員が地球の保護磁気圏をはるかに超えて遠く離れるため、国際宇宙ステーションよりも高レベルの宇宙放射線にさらされることになる。そのため、飛行士は将来の月基地建設や火星探査に向け、深宇宙旅行が人体、免疫、精神、行動にどのような影響を与えるかに関する科学的なデータの採取を行う。

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