"月100頭出荷"の希少な豚が松屋銀座に並ぶまで。3Kイメージを覆し「みやじ豚」を育てた4代目の経営思想
バーベキューに参加した人たちの「おいしい」という声や、楽しそうな写真がSNSで広がった。なかには、行きつけの飲食店で「みやじ豚」を薦めてくれる人も少なくなかった。そうした口コミをきっかけに、レストランから「みやじ豚を扱いたい」という問い合わせが相次ぎ、やがてその声は、松屋銀座にも届いた。
こうした広がりとともに、メーリングリストの登録者数も増加。2026年現在は2万人近くにのぼる。
そうして2、3年ほどで売り上げは順調に伸び、2006年に法人化。2008年には農林水産大臣賞を受賞し、神奈川県を代表するブランドへと成長していった。
品質を支える、生産現場の哲学
みやじ豚の品質を支えているのは、父・昌義さんの徹底したこだわりだ。その軸となるのは、「血統」と「餌」と「ストレスを与えない環境」の3つ。
肉質を追求し、丈夫でたくさん子豚を産む「ランドレース」、保水性に優れ、筋繊維がきめ細かい「ヨークシャー」、肉質に優れている「デュロック」。それぞれの長所をいかし、この3品種をかけあわせた三元豚を育てている。お母さん豚は、目利きで選び、肉付きや歩き方から、柔らかい肉がとれそうなメスを選ぶという。
特徴的なのが餌だ。一般的な養豚ではトウモロコシ中心の飼料が多いが、みやじ豚は米、小麦、大麦、さつまいもなどを配合した飼料で育てられる。その結果、うま味に富み、白く綺麗な脂肪をもつ豚に育つという。食べたものによって肉の味も変わるので、よりおいしい豚を目指し、配合を変えては成分分析を重ねてきた。
もうひとつ、大切にしているのが、ストレスをかけないこと。ストレスは肉の臭みやアクにつながるとされている。宮治家では「腹飼い(はらがい)」と呼ばれる方法で、同じ母豚から生まれた兄弟だけを同じ部屋で育てる。余計なストレスを避け、のびのび育てるための工夫だ。
月に出荷できるのは100頭ほど。少頭数を丁寧に育てることで、おいしさを追求してきた。その結果、地域の養豚農家が集まる肉質コンテストの味比べでは、毎年のように宮治家の豚が1位を獲得してきたという。
「俺の育てた豚が一番うめえんだ」
ふとした瞬間にこぼれる父・昌義さんの一言に、無口な職人としての誇りがにじむ。
昌義さんが変わったのは、バーベキューイベントが始まってからだった。お客さんが「おいしい」と言って豚肉をほうばる姿を目の当たりにし、自分が育ててきた豚の味が証明されたと感じたのだろう、よく話すようになり、笑顔も増えていったという。


















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