"月100頭出荷"の希少な豚が松屋銀座に並ぶまで。3Kイメージを覆し「みやじ豚」を育てた4代目の経営思想
後継者不足は、農業に限った話ではない。あらゆる業界で、家業をどう引き継ぐかが問われている。そこで農業という枠を超え、すべての家業の後継者を対象にした場として、2017年に「家業イノベーション・ラボ」を立ち上げた。業種も地域も異なる後継者たちが集い、それぞれの悩みや挑戦を共有するコミュニティだ。
宮治さんは言う。
「『経営者は孤独』とよく言いますが、僕はそこまで孤独だとは思っていません。ただ、家業の後継者は、孤独になりやすいかもしれない」
先代が築いてきた会社に入り、社員は皆、父親のほうを向いている。自分のやりたいことがあっても、社長である父はなかなか首を縦に振ってはくれず、社員にも理解されないという苦しい状況に置かれる人は少なくないという。
「だからこそ必要なのは、同じ立場の『家業の後継者』たちとのつながりです。話せる場所があるだけで、気持ちが軽くなったり、勇気がもらえるのです」
では、宮治さんはなぜ、そこまで家業にこだわるのだろう。
「『自分の人生をいかに生きるか?』みたいなものを、みなさんテーマに持っていると思うのですが、家業のある家に生まれた人にとって、自分の個性をいちばん発揮できる場所は、家業かもしれない。外の世界を見てきたからこそ、会社で培ってきたスキルやノウハウを、家業にいかせる場面がじつはたくさんあるのです」
大企業であれば、代わりはいくらでもいる。けれど、家業において、「親の後を継ぐ」という役割を果たせるのは、自分しかいない。
「そう捉えると、見える景色は大きく変わってくると思います」
現在、「家業イノベーション・ラボ」には、北海道から沖縄まで約700名が参加している。Facebookグループを拠点に、メンターによる伴走プログラムが行われ、家業の後継者同士が、日々の悩みや試行錯誤を率直に共有し合う場として、少しずつ広がってきた。
これまで、家業の後継者は、同じ立場の人と出会う機会が少なく、悩みを一人で抱え込みがちだった。「家業イノベーション・ラボ」は、そうした孤立をほどき、「自分だけが悩んでいるわけではない」と実感できる場所になっている。
コロナ禍の危機で、売り上げが8割減
「豚だけに、トントン拍子に、なんてね」
ときおり冗談を交えながら、宮治さんは事業の歩みをふり返ってくれた。しかし、ずっと順風満帆だったわけではない。法人設立以来最大の危機となったのが、2019年から2020年にかけてのコロナ禍だった。


















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