大手企業を20代で辞めると聞くと、多くの人はまず「怖くはなかったのだろうか」と思うだろう。環境や肩書を手放す決断は重いはずだ。
「怖さがなかったといったら嘘になりますけれど、会社を辞めること自体より、このまま同じ立場で何年も過ごして、成長の機会を逃すことのほうがリスクだと感じました。
仕事は充実していましたが、一通り学びたいことを学んだ気がしたんです。会社での仕事は役割が決まっていて、どうしても自分が関われる範囲が限られますよね。企画を立てた後どう運用されるのか、数字がどう動くのかなど、全部を見られるわけではないので、最初から最後までを自分で引き受けてみたいな、と常々思っていました」
広告代理店での経験を通して、マーケティングの全体像が見えてきたからこそ、部分的ではなく、経営や収支も含めて引き受ける側にまわりたいという意識が、強くなっていったそうだ。
「独立って聞くと、すごく思い切った決断みたいに見えるかもしれません。でも私の中では、完全に未知の世界に飛び込む感覚ではなかったんです。広告代理店で得た職能を活かしてフリーランスの立場で雇ってくれるクライアントを確保するなど、着々と準備してきましたし」
独立は、安定を捨てる賭けというよりも、自分が描いていた仕事のかたちを実現するための選択。だから「怖くなかったのか」という問いに対する答えは、イエスかノーではなく、「ある程度の見通しはあった」ということのようだ。実際、住まいも含めた生活費用や事業の運営資金は、すべて自身の収入から賄っている。
だからこそ、ひとつの問いが浮かぶ。用意周到なchihiroさんが次に選んだのが、なぜジュエリーだったのか。
なぜジュエリー? ビジネスと創造性の狭間で
ジュエリー業界の成長可能性についてchihiroさんに聞くと、「たとえば昨今のAIのように、分かりやすく右肩上がりの市場ではない。一方で、完全に縮小していく産業とも感じていない」という。
「よくアパレルは厳しいって言われますけど、ジュエリーは消耗品じゃないので、嗜好品としての価値がある。ブランドの価値次第で価格をつけていける余地はあると思っています。
最近では、中性的なデザインの商品を出したら、男性のお客さんが増えたのが発見でした。20代の男性で、意外と繊細なデザインを好む人もいて、変化を感じています。ただ、金が高騰して、原価がかなり上がっている点は、悩ましいですね」


















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