無茶な要求も「笑顔で対応」営業職を襲う"心の摩耗"の代償 『感情労働』のコストを企業はもはや無視できない
実際に私たちコンサルタントもそうだ。特に自己中心的な社長とコミュニケーションをとるとき、激しい葛藤を覚えることがある。
「こんな理不尽な社長のために、社員をリストラしなくちゃいけないのか」
会社を生存させるためとはいえ、感情を押し殺し、粛々と職務を遂行しなくてはならないときがある。これは、なかなかできることではない。実務能力が高ければできる、というわけではないからだ。
しかし、
「感情管理はスキルなのだから、磨けば誰でもできるはずだ」
と思い込むのは早計だ。
本来は組織がケアすべき精神的負担の問題が、個人の能力不足の問題へとすり替えられてしまうからだ。
社員が辞めない組織を作るために
感情労働が社員を辞めさせる本当の理由。それは業務の忙しさやクレーマーの存在そのものではない。
真の理由は「自分の感情の所有権を奪われ、組織や顧客のために切り売りさせられている」という感覚に対し、組織からの十分なリスク対策や承認・評価がされていないことにある。
そのため社員の離職を防ぐために、企業は以下の視点を持つ必要があるだろう。
感情労働は、肉体労働と同じように消耗する労働である。これを「やる気」や「性格」の問題で片付けてはならない。正当に評価し、報酬に反映させる必要がある。
「お客様は神様」ではない。お客様は、お客様としての礼儀をわきまえていることが「前提」だ。組織として悪質な要求には応じない姿勢を明確にする。従業員を守るマニュアルや体制を整備することが重要だ。
マニュアルで感情を縛り付けるのではなく、会社側はしっかりとケアすべきだろう。演技によって生じたストレスを同僚や上司と共有する場を与えるなど、支援することでバーンアウトを防ぐのだ。
感情労働は、AIには代替できない、人間ならではの価値ある労働だ。だからこそ、その担い手が「自分自身」を見失い、摩耗してしまわないよう、組織は彼ら彼女らを守らなければならない。
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