「週前半は私、後半は彼女。2人で仕事を調整し合うから、学校行事にも法廷にも行けるの」と話すのは、40代弁護士。同僚と職務を分担する「ジョブシェア制度」を活用する彼女は、2児を育てるシングルマザーとして、管理職を務めている。
「妥協じゃない。これが私たちの最善の働き方よ」
子どもの前で絵本をめくる指先には、整えられたネイルが光る。サロンに行く時間まで確保できるのか――。その姿は、制度に支えられながらも、自分らしさを保つ働き方の象徴のように筆者には思えた。
「金曜は子どもと過ごす日。給与も職責も変わらない。評価の軸は、勤務時間ではなく成果」と話すのは別の女性、育児休暇後に復職した30代マーケターの友人だ。彼女が勤める飲料メーカーでは、正社員に週4日勤務が導入されている。
このように、イギリスでは、給与を維持したまま週4日勤務を恒久導入した企業が2025年1月時点で約200社、以後増加している。「時間を減らすこと=責任を減らすこと」ではない。
イギリスの“辞めない仕組み”
「イギリスでは、働き方を変えることが“権利”として認められています」。在英17年のグローバルビジネス&キャリアコンサルタント・藤田怜子氏(Mindful Career Partner代表)は語る。
2024年に施行された「柔軟な勤務形態の申請権利」では、“入社初日”から時短勤務やテレワークを企業に申し出る法的権利がある。企業は正当な理由がなければ拒否できないとされている。
制度の導入には企業差もあるが、柔軟な働き方を法的に保証する国は世界的にも少ない。制度があることで、選択肢と余白が生まれる。そんな空気が、少しずつ広がっている。


















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