「仕事はシェア」「週休3日」。イギリスの"給与も職責も変わらない"母親の働き方――なぜ日本は海外に学べないのか。女性のキャリアを阻む壁とは

✎ 1〜 ✎ 37 ✎ 38 ✎ 39 ✎ 40
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

藤田氏が日本で「心のOS」を広げようと考える背景には、自己の喪失体験に加え、日本社会への問題意識がある。

「日本では私と同じように、制度や文化の壁にぶつかり、自分を責めてしまう女性が少なくない」。17年間のイギリス生活で目にした、生き生きと働くイギリス女性たちの姿は、日本にこそ必要な視点だと気づかせた。

「良い意味でのグローバルスタンダードを伝えることで、もっと肩の力を抜いて自分らしく働ける日本社会をつくりたい。結果として、日本の女性リーダーを増やすことにもつながると信じています」と藤田氏は語る。

今後も受講者に対し、自己効力感を育みながら自分らしく働けるよう、年間を通じて継続的な支援を続ける計画だ。

あなたの「心のOS」はどうか

キャリアの継続は個人の幸福にとどまらず、少子高齢化に直面した日本社会の持続可能性にも直結する。

OECDの試算(2021年報告)によれば、男女の労働参加率や就業時間の差を解消すれば、日本のGDPは2060年までに最大9.2%増加する可能性がある。裏を返せば、柔軟に働く制度の導入・運用・定着の遅れが、 経済的損失につながっているともいえる。

制度が整っても、申請しづらい空気、評価への不安、フルタイム前提の昇進制度などが残る。実効性を高めるには、心理的な準備も欠かせない。それが、母親としての罪悪感を和らげる文化と、心のOS=自己効力感を整える支援だ。

藤田氏は語る。

「制度や文化を変えるには時間がかかります。でも、自分の心のOSをアップデートすることは、今日からでもできる。まずは、自分がどんな思い込みや前提で働いているのかに気づくこと。その一歩が、『自分にもできる』という、挑戦の力につながる」

制度・文化・心のOS更新――。この3層が揃ってこそ、キャリアは分断されずに続いていく。あなた自身は、どんな“心のOS”で働いていますか。

マークス 堀米 千恵 コンテンツ編集者(ロンドン在住)

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

まーくす ほりごめ ちえ / Chie Marks Horigome

全国紙の報道記者として社会課題を取材した経験を基盤に、広告制作会社での企画編集、食分野での執筆企画に約20年携わってきた。現在は、英国を拠点に、欧州の暮らしや働き方、農業・食文化をテーマに取材活動を続けている。世界100か国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事