藤田氏が日本で「心のOS」を広げようと考える背景には、自己の喪失体験に加え、日本社会への問題意識がある。
「日本では私と同じように、制度や文化の壁にぶつかり、自分を責めてしまう女性が少なくない」。17年間のイギリス生活で目にした、生き生きと働くイギリス女性たちの姿は、日本にこそ必要な視点だと気づかせた。
「良い意味でのグローバルスタンダードを伝えることで、もっと肩の力を抜いて自分らしく働ける日本社会をつくりたい。結果として、日本の女性リーダーを増やすことにもつながると信じています」と藤田氏は語る。
今後も受講者に対し、自己効力感を育みながら自分らしく働けるよう、年間を通じて継続的な支援を続ける計画だ。
あなたの「心のOS」はどうか
キャリアの継続は個人の幸福にとどまらず、少子高齢化に直面した日本社会の持続可能性にも直結する。
OECDの試算(2021年報告)によれば、男女の労働参加率や就業時間の差を解消すれば、日本のGDPは2060年までに最大9.2%増加する可能性がある。裏を返せば、柔軟に働く制度の導入・運用・定着の遅れが、 経済的損失につながっているともいえる。
制度が整っても、申請しづらい空気、評価への不安、フルタイム前提の昇進制度などが残る。実効性を高めるには、心理的な準備も欠かせない。それが、母親としての罪悪感を和らげる文化と、心のOS=自己効力感を整える支援だ。
藤田氏は語る。
「制度や文化を変えるには時間がかかります。でも、自分の心のOSをアップデートすることは、今日からでもできる。まずは、自分がどんな思い込みや前提で働いているのかに気づくこと。その一歩が、『自分にもできる』という、挑戦の力につながる」
制度・文化・心のOS更新――。この3層が揃ってこそ、キャリアは分断されずに続いていく。あなた自身は、どんな“心のOS”で働いていますか。
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