NHK「あさが来た」、「まれ」とは違う好感触 6週連続視聴率20%突破の理由を探る

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注目は、男女の枠を超えたビジネスマンとしてのあさ。たとえば、「強引に貸し付けを迫る新選組・土方歳三(山本耕史さん)に一歩も引かず、返済の約束を交わした」シーン、「宇奈山藩の蔵屋敷に乗り込み、粘って貸付金を回収して当主の信頼を勝ち取った」シーン、「奈良の豪商・玉利友信(笑福亭鶴瓶さん)に借金を頼み込み、無利子での融資を得た」シーンは、勝負所における振る舞いや、胆力の大切さを表していました。

これらはいずれも、あさが嫁いだ加野屋の一員(いち社員)という立場での活躍でしたが、今後は加野屋のリーダー(経営者)としての力量が問われるシーンが続きます。その第1弾が今週からはじまった炭鉱編。経営者として、社員にあたる炭鉱夫からの突き上げを受けるあさがどんな活躍を見せるのか。人心掌握術とともに、事故などのピンチを乗り越える姿など参考になることが目白押しなのです。

あさとはつ、姉妹の明暗から学ぶ

そのほかにも、「しょせん女性」とむげに扱われても気にしない。わからないことは「何でだす?」と疑問を持って素直に聞く。相容れないことがあっても「びっくりぽん」と深刻に受け止めないなど、ビジネスマンの姿勢として、あさから学ぶところはまだまだあります。

ちなみに広岡浅子の座右の銘は、「九転び十起き」。ことわざよりもそれぞれ2回も多いのは、彼女の人生が波乱万丈だったことの裏返し。その生涯を振り返ると、「これほどの人物がなぜあまり知られていなかったのか?」と不思議なくらいです。

また、あさの活躍を見ていると、「幕末から明治にかけた変革期ゆえのピンチをどう乗り切り、どうチャンスに変えるか?」という観点では、不況や混迷が続く現代にも通じるものを感じます。ピンチをチャンスに変える加野屋とあさ、ピンチから脱出できない山王寺屋とはつ。明暗がはっきり分かれた2つのサンプルがあるため、参考にしやすいのです。

ここまで主にビジネスの側面から書いてきましたが、もちろん「ダブルヒロインがかわいいから」という男性目線で見るのもあり。波瑠さん演じるあさは、絶対的な明るさと笑顔で元気にさせてくれますし、あさの姉であり宮崎あおいさん演じる「はつ」は、健気さとはかなげな佇まいで男心をギュッとつかんでくれます。『あさが来た』は、「そんな動機で見ていたら、ビジネス面で勉強になった」というパターンが期待できる稀有な朝ドラとなっています。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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