NHK「あさが来た」、「まれ」とは違う好感触 6週連続視聴率20%突破の理由を探る

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実際、前作『まれ』は、脚本の迷走などを理由に、個人SNSや各メディアから過剰ともいえるバッシングを受けました。私は正直「そこまで言われるほどかな……」と思っていたのですが、これも朝ドラの視聴者層が広がり、テレビ業界のトップに君臨しているためであり、仕方がないのかもしれません。

そして、『あさが来た』を手掛けるNHK大阪のスタッフは、「絶対に失敗しない」ために、これでもかというほどの策を用意しました。

成功法則のベースと3つの新機軸

その策は「時代物の女性一代記」「波瑠さんと宮崎あおいさんのダブルヒロイン」「3つの家を描くホームドラマ要素」「頑固親父と姑イビリ」「ヒロインが話す『どす』などのキュートな方言」「決めゼリフの『びっくりぽん』」「ヒロインの幼少期に名子役の鈴木梨央を起用」など多岐に渡りますが、これらは過去のヒット作から得た成功法則。さらに、大河ドラマ『新選組!』と同じ土方歳三役で山本耕史さんを起用し、重要な役に謎のカタカナ俳優ディーン・フジオカさんを抜擢するなど、メディアやSNS対策の話題作りも万全です。

しかし、すべて成功法則通りに作っても、視聴者に既視感を抱かれるか、マンネリを感じさせるだけ。そこで制作スタッフは、「幕末からのスタート」「ヒロインの実家が名家で裕福」「大物実業家としての成功物語」という3つの新機軸を打ち出しました。いずれもこれまでの朝ドラとは一線を画すコンセプトであり、新鮮味を感じるとともに、「幕末」や「大物実業家」というキーワードで、男性たちの興味を引きつけているともいえるでしょう。

つまり制作スタッフは、「過去の財産である成功法則をベースにしつつ、思い切った仕掛けを用意していた」ということ。「好調だからこそ大胆に行こう」ではなく、「好調だからこそ慎重かつ大胆に行こう」という姿勢が伺えます。

前述した新機軸の中で、当作の中心となっているのは、「大物実業家としての成功物語」。ヒロイン・あさのモデルとなった広岡浅子は、炭鉱事業に乗り出したほか、加島銀行、大同生命、日本女子大を設立した明治を代表する実業家であり、当然ドラマもビジネスに関するシーンが大半を占めています。

いわば、『あさが来た』は、単なる女性一代記でも、家族愛の物語でもなく、半年間の放送期間に共通するメインテーマはビジネス。家族や夫婦はサブテーマにすぎず、東洋経済オンラインの読者のみなさんのようなビジネスマンにこそ見てほしい作品なのです。

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