それから約1カ月半後、同じ母親から2回目の依頼が入った。今度は、亡くなった娘が住んでいた賃貸マンションを空にすることが目的だった。
「基本的に残しておくモノはもうなく、ある程度お母様のほうで、いるモノ、いらないモノを確認いただいているので、空の状態にする作業になります」
現場のスタッフは状況をそう説明する。いわゆる「ゴミ屋敷」という状態ではない。しかし、一般的な1人暮らしの家と比較すると、モノは多めだった。
リビングにある食器棚の引き出しを開けると、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでもらってきたと思われるプラスチックのスプーンや割り箸が、詰め込まれていた。「いつか使うだろう」と保管しておいたモノだろうが、そのほとんどは使われることがないまま残されている。
食器類は、「1人暮らしにしては」という注釈が不要なほど多い。仮に4人家族だとしても、十分すぎる数が揃っており、棚にはレトルト食品のストックも溜まっていた。
親が子どもを先に亡くすということ
亡くなった娘は、同人誌で活躍する漫画家だった。仕事部屋だった書斎には、やはり漫画や紙類が多く、本棚からあふれた書籍、制作のための資料、そして床には領収書の束などが散らばっている箇所もある。
遺品整理の現場では、当然、スタッフたちが住人と会うことはない。だが、残されたモノを通じて、その人となりを想像することになる。



















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