「親や祖父母の遺品整理は、もちろん遺族に悲しみもありますが、『こんなモノ持ってたな』『まだ残ってたんだ』など、和気あいあいと思い出を語り合う場面も見られます。言ってしまえば、そこまで暗い雰囲気でもないし、悲壮感もない。しかし、子どもの遺品整理となると事情が大きく変わってきます」
想像にかたくないが、一般的な遺品整理よりも悲しみや喪失感は大きい。
「仮に亡くなった親が賃貸に住んでいた場合、時間をかけるだけ支払う家賃の額も増えていく。遺族はもちろん丁寧に遺品を見ていきますが、家賃の問題もあるので早めに片付けようとするのが一般的です。しかし、子どもの遺品整理となると、お金や時間のことは気にしない親がほとんどです」
子どもの遺品が残された部屋に誰も住んでいなくても、家賃を支払い続ける。そうしてでも、ゆっくりと時間をかけて遺品整理を進めようとする。業者を選ぶ基準も、「より安いところ」という観点にはなりにくい。できれば自分たちの心情に寄り添ってくれそうなところを選びたいだろう。
「最後の一歩」を踏み出すきっかけ
現場での接し方も変わってくる。
「現場では必要以上に話さないようにしています。あえて淡々とやることで、親御さんの悲しみを増幅させないようにしています。だから、変に励ますこともしません。親が子どもの遺品を片付けるのは、相当な苦痛なはずです。以前、子どもの勉強机がパッカー車(ゴミ収集車)に巻き込まれていく光景を見て、泣き崩れた親御さんもいらっしゃいました」
ただ、機械的にモノを運び出すわけではない。作業の中で、故人が大切にしていたと思われるモノや、よく使っていたと思われるモノが出てきたときは、1つひとつ「どうしますか?」と遺族に声をかける。作業はその繰り返しだ。



















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