『国宝』と比較される『宝島』だが…ストーリーは難解、それでも沖縄県民の私の心が震えた訳「空前規模の"あのシーン"解像度の高さ」に驚き

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史実に基づいたシーンはほかにもある。学校に米軍機が墜落したのもそうだし(宮森小学校米軍機墜落事故、1959年)、毒ガスの沖縄県内の備蓄もそうだった。

「くぬ島は変わったか」今の自分はどう応える?

沖縄に住んでいるとて、普段から沖縄の現代史を意識しながら生活しているわけではないが、このような作品や表現に触れるたびに「日本人というマジョリティでありながら沖縄人というマイノリティだな」と自覚させられる。

ただ、こうやって振り返ったときに、マイノリティの視点から一つ誇れることがあると気が付いた。かつて沖縄の人々は日本への復帰運動を通して、自分たちのアクションで民主主義、憲法、人権を自発的に勝ち取ろうとしたし、それを後押ししたではないか。これは日本全体で見ると珍しい歴史だと思う。「民主主義は勝ち取るもの」という市民感覚がこのとき育ったはずである。

宝島
広瀬すず演じるヤマコも、戦後は特殊飲食店街で女給として働きながら勉強を重ね、失踪した恋人との約束を果たして教師となった(画像:映画『宝島』公式サイトより)

本作で、かつてのリーダー格・オンちゃん(永山瑛太演)は仲間たちに力強くこう言った。「くぬ(この)島は変わるよ」。自分たちの島を自分たちに取り戻そうとして放ったであろうこのワードに対して「くぬ島は変わったよ」と胸を張って言えるのか。アクションを起こし続けているのか。そういった覚悟を問いただされている気持ちになる。

宝島
米空軍嘉手納飛行場。現在、沖縄本島の総面積のうち約15%が米軍基地である。沖縄県内には30以上の米軍専用施設があり、一般の日本人は特別な許可が無いと立ち入れない。手前に見えるフェンス内側の畑は米軍施設内にあるものの、戦後の混乱の中で地主が畑として使用することを米軍側から“黙認”されている「黙認耕作地」と言われるもの(筆者撮影)
長濱 良起 フリーランス記者

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ながはま よしき / Yoshiki Nagahama

フリーランス記者。得意ジャンルは音楽・経済。沖縄県出身・在住。
元琉球新報記者。フリー転向後も新聞や雑誌、書籍、ウェブ媒体などでの記事執筆を続け、これまでの取材執筆本数は約2000本。海外メディアの日本国内取材コーディネーターとしても活動。旅と音楽が好きで、訪問国数40ヵ国超。1986年生まれ。

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