40年前のSF映画が描いた近未来への警鐘 傑作・名作は時間が経っても色褪せない

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いつの世も、近未来を描くSF作品はヒット映画の鉄板だ(写真:ツネオMP / PIXTA)
モノ情報誌のパイオニア『モノ・マガジン』(ワールドフォトプレス社)と東洋経済オンラインのコラボ企画。「たかみひろしのシネマ・ショウ」をお届けしよう。
音楽・映像プロデューサーのたかみひろし氏が、毎回の特集するテーマに沿って必見のDVD/ブルーレイ作品を講評とともに紹介する企画。今回紹介するのは、1960~1980年代という今から40年以上前の時点で描かれた近未来の映画ばかりだ。

デジタル全盛期の今だから、未来警鐘SF映画を!

今回はSF映画集。確かに世はデジタル全盛期を迎え、スマホ、PC、オーデイオ、デジカメなどと便利この上ない。たかみ自身も仕事柄もあり、こういった最先端のテクノロジー製品を(それなりには?)追いかけ、享受してきた。

一方、SF小説では早い段階からそんな未来社会に対する警鐘、鋭いメッセージの込められた名作が登場し、ほとんどが映画化されている。たとえば今回の特選に選定した『華氏451』(1966年)は、思想管理社会(本の所有が禁じられた社会!)に対する警鐘。『THX-1138』(1971年)も思想統制の敷かれた社会から逃亡を企てた男の話だが、一部あの「プリズナーNo.6」を思わせる作品だ。『トロン』(1982年)は世界征服を企むコンピューターとのバトル、『ウエストワールド』(1973年)は突如人類に牙をむくロボット/アンドロイドの恐怖を描く。

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この手の未来警鐘SF映画はほかにも数多い。『第5惑星』(1985年)は人種差別(?)と反戦。『少年と犬』(1975年)は反戦(核戦争後の荒廃世界)。『ソイレント・グリーン』(1973年)は人口過密問題とそれに伴う食糧危機(老人問題も?)。そして『地球の静止する日』(1951年)も反核、反戦。『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス原作)などは、SFというより立派な文学作品ともいえる。近年のロボット/アンドロイド~エイリアン~怪獣との派手なバトルシーン(VFX)が売りの、まるでゲームの延長線みたいなSF映画も悪くはないが、上記のような古典的SF映画もぜひ合わせて鑑賞することをおススメしたい。

書籍や新聞は電子化されつつあり、音楽はLPからCDへ、そして(圧縮)ファイル化され、ネット配信されるようになった。確かにハイレゾ・サウンドは圧倒的美音ではあるが、いまもジャケットの魅力に引きずられているたかみは、アナログLPとは言わないまでも、せめて紙ジャケCDを眺めながら音楽を楽しみたい。利便さだけが率先して追求される社会では、代わりになにか大切なものが失われていくようで少し寂しい。個人的に全映画のBEST10に入れたい傑作『華氏451』(日本でもブルーレイ化を望む!)を改めて鑑賞し、本に埋もれて死ねるなら幸せだなあと思った(悪友たちから、「すでにその状態だろ!」なんて意地悪言われそうだが)。

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