『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』など、手掛けた作品すべてが高い評価を受け、世界的に注目を集めるアニメーション映画監督・細田守にとって3年ぶりの最新作『バケモノの子』が7月11日から全国で公開されている。
バケモノと少年のちょっと変わった師弟関係を軸に、バケモノたちが住む「渋天街」と呼ばれる異世界での修行と冒険、リアルな渋谷を舞台とした壮大なアクション、そして親子の絆やヒロインとの淡い恋愛模様などがちりばめられた本作は、正に、子どもと大人が一緒に楽しめる夏のアニメーション映画の王道へと仕上がった。また、役所広司、宮﨑あおい、染谷将太、広瀬すず、大泉洋、リリー・フランキーら日本を代表する俳優陣が声優を務めることも話題となっている。
そんな本作を企画・制作した「スタジオ地図」代表取締役の齋藤優一郎プロデューサーに、本作で渋谷を舞台とした理由、そして海外戦略などについて聞いた。
バイタリティの街、渋谷が舞台
ーーこの映画は渋谷が舞台となっています。代々木公園、センター街、果ては渋谷図書館に至るまで、街の様子が緻密に再現されていて、観た人は驚くのではないでしょうか。たとえば長野県上田市を舞台とした『サマーウォーズ』の時は、映画が町興しのきっかけになったと思いますが、この作品でもそういった意図はあったのでしょうか?
『サマーウォーズ』制作時、そして公開以降と、長野県上田市の皆さまには今もずっと作品を大事にして頂いて心から感謝致しております。でもその始まりは、決して、大きなうねりから始まったことではありませんでした。
『サマーウォーズ』は、細田監督が結婚をして上田市にある奥様のご実家で体験をした驚きや大家族のすばらしさが映画制作のきっかけとなった作品です。ですから、映画の舞台は上田市以外にはあり得ませんでした。作品が映画の舞台を決めたんですね。そして、ロケハンを始め、作品制作の中でも大変お世話になった上田市役所の観光課の方が、本当にありがたいことに、ものすごく『サマーウォーズ』という作品と細田監督を気持ちで応援して頂いた。次第にその方の情熱やバイタリティが、上田市全体を包み込んでいくようなり、結果、最終的に今に続く大きなうねりを作っていくことになったのです。でもそれは本当に、人と人の気持ちから始まった、それがすべてのことなのでした。
ーー確かに上田市は『サマーウォーズ』の聖地的な盛り上がりを見せました。
毎年7月の最終土曜日に開催されて、『サマーウォーズ』の劇中にも描かれている「上田わっしょい」というお祭りには、今でも映画のキャラクターに扮した多くの方々がお祭りに参加するため、全国から上田市を訪れていただいていると聞いております。公開から6年が経った今でも、このように作品が長く愛され、さまざまな形で映画を楽しんで頂けているという事実には、つねに僕らが励まされています。
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