ーーアニメーションとはいえ、これほど渋谷の景色をたくさん見せた作品も珍しいですね。
そうですね。今回の映画のスタートは2006年の渋谷から始まり、2015年現代の渋谷で終わるのですが、実は1997年の渋谷も劇中に登場しますので、是非、3つの時代の渋谷の変化と一緒に作品を観て頂けると、また違った映画の楽しみ方をして頂けると言うこともあるかもしれません。
志が同じフランスのパートナーと共に海外でも展開
ーー渋谷は、外国人に人気スポットとして知られています。ここを舞台にすることで、海外的なマーケットも意識できるのでは、と思ったのですが。海外戦略はどうなっていますか?
映画の舞台をきっかけに海外マーケットを意識したことはありませんが、これは私たちの新しいチャレンジのひとつとして、今年120周年という歴史を持つ世界最古の映画製作・配給会社ゴーモン(フランス)と提携をし、アジアを除くインターナショナル・セールスとフランスの配給を彼らと一緒に行うことにしました。今年2月に行われたベルリン国際映画祭にて、その事を世界に向けて発表をさせて頂き、また『バケモノの子』の映像と共に、発表会をゴーモン手動で開かせて頂いたのですが、本当に多くの海外のバイヤーの方々、またメジャースタジオの方々にお越し頂き、私たちの新しいチャレンジを観て頂いたのですが、そこで話題になったトピックスのひとつとして、細田守監督の新作映画の舞台はあの渋谷かということだったと聞いています。QFRONT前に主人公のバケモノと少年が一緒に前を見据えてたたずむという絵には相当なインパクトがあったのだと思います。
ーーそれではもうフランスでの公開は決まっているのですか?
フランス公開は来年2016年1月13日を予定しています。またすでに、現状公開前の時点で36の国と地域での配給が決まっており、最終的な数字としては、前作『おおかみこどもの雨と雪』で配給された90の国と地域を越える規模になっていくのではないかと思っています。
ゴーモンとは『おおかみこどもの雨と雪』公開後、約2年間に渡り、ずっと話し合いを続けてきた仲でして、きっかけはこれも「人」と「人」との繋がりと連鎖の中で出会い、時間をかけて気持ちと哲学が共有され、今回の新しいチャレンジ、ビジネス展開へとつながっていったという流れです。
けっして、海外のメジャースタジオと組みたいとか、もっとビジネスの規模を大きくしていきたいと言ったそういった発想から生まれた話ではなく、ゴーモンのヨハンという、とても細田守監督作品と監督自身に気持ちをもってくれている気のよい青年がいて、その彼がとても主体性と覚悟とチャレンジ精神を持った人でした。そしてこの2年間、僕と気持ちと哲学の共有がずっと続いてきた時間があって、「さあ『バケモノの子』をどうやってこれまで以上に海外の方々へも届けていくことができるのか」と考えたとき、まずいちばん最初に、頭に浮かんだのがヨハンの顔でした。彼との会話だったというのがいちばん大きいのです。まだ何も為し得ていることではありませんが、気持ちと哲学を持った彼らと一緒に、細田監督作品を世界の映画史の文脈へのせていくための種まきを一本一本していきたい。引き続き、チャレンジをしていきたいと思っております。
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