ところで、私たちが腎臓リハビリを確立する際、その研究の過程で見えてきたのは「想像をはるかに超える『安静』の怖ろしさ」でした。人は病気だからといって安易に安静という道を選んでしまうと、筋肉量が落ちて身体機能が低下し、どんどん寝たきりへ近づいていってしまうものなのです。
そもそも、人の筋肉量は中年以降じわじわと少しずつ低下していきます。通常であれば、30代以降、1年歳をとるごとに平均1%ずつ筋肉量が落ちるのです。5年経てば5%、10年経てば10%、30年経てば30%の筋肉が減るわけですから、これだけでも相当量の筋肉が減ってしまうことがお分かりでしょう。
しかも、体を動かさずに安静にしていると、この筋肉減少がものすごい勢いで進んでしまうことになるのです。
研究では、丸1日ずっと体を動かさずに安静にしていると、なんと1日で2%もの筋肉量が低下してしまうことが明らかになっています。通常であれば「1年で1%の減少割合」でおさまるはずですので、たった1日の安静で2年分もの筋肉が失われることになります。
もし、10日間ずっと絶対安静にしていたとしたら、1日2%ペースで行けば10日間で20%もの筋肉、20年分の筋肉がごっそりと失われてしまうことになるわけです。
「40年分の老化」が安静でもたらされた
それに、安静で衰えるのは筋肉だけではありません。ちょっと古い研究ですが、1966年にアメリカで行なわれた「安静実験」の例をご紹介しましょう。
この研究では、5人の20歳の健康な男性被験者に3週間の完全安静生活をしてもらい、3週間後、彼らの体力や持久力の度合いをチェックしました。これにより驚くほどの体の衰えが計測されたわけですが、じつはこの研究がおもしろいのはここから先なのです。
実験後、彼ら5人は普通の生活に戻り、トレーニングによって元通りの体力を回復させていたのですが、最初の実験から40年の歳月が経って5人が60歳になったある日、再び体力や持久力の検査を行なったのです。すると、5人の体の衰え方の平均値は、40年前の安静実験後の結果と同等でした。
すなわち、この研究では「たった3週間の安静で40年分の老化がもたらされる」ということが確認されたわけです。
このように、体を動かさずにいると、人はものすごいスピードで老い衰えていってしまうことになるのです。


















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