11月4日、郵政関連3株が上場した。予想通り株価は公開価格を大幅に上回り、かんぽ生命に至っては50%以上も上昇、ストップ高で上場初日を終えた。
大きく上昇したことは当然で、通常のIPOと同じだ。多くのIPOでは公開価格を初値が大きく上回る。公開価格とは、上場にあたって一般の投資家に売却される価格であり、初値とは、上場したときに最初についた価格である。後者が前者を上回ることは、ファイナンスの学問の世界ではIPOパズルとして知られている。
売り出し価格が安すぎるか、初値が高すぎるのか
なぜパズル(謎)かというと、そんな高く初値がつくのなら、なぜ公開価格をもっと高くしておかなかったのか、という謎が残るからである。創業者が上場して、キャッシュアウトして、創業者利益を獲得したり、今回のように、政府(および日本郵政)が売り出して上場益は復興予算に使われたりするわけだが、その利益の額が多いに越したことはない。わざわざ安く売ることなど、ありえないのである。
議論は2つのカテゴリーに分かれる。公開の売り出し価格が安すぎるか、上場時の初値が高すぎるからか、どちらかである。後者は、要はIPOバブルであるという議論であり、いかにも私が好きそうなものであるが、今回の郵政上場は、前者、公開価格が安すぎたことが主な要因だ。そして、その結果、バブルも起きた。つまり、ハイブリッドバブル(私の日本国債についてのハイブリッドバブルとは別の)であり、両方の要素が相まって、公開価格と初値の差が生まれ、初値後、上昇が一定期間続くのである。
これは郵政に限ったことではなく、ほとんどのIPOバブルはこの構造だ。公開価格が安すぎるためバブルを生み出すのだが、それは意図的であり、戦略的である。どういうことか。
郵政の場合と異なって、多くの場合、IPOは小型株である。その企業はスタートアップから数年でスピード上場を果たし、これからまだまだ伸びていくという触れ込みで上場する。資金調達も必要だ。このシナリオにおいては、上場後、株価が上昇し続けないと具合が悪い。かっこ悪いというのもあるが、実用的にも困るのである。
なぜなら、第一に、創業者は通常(特に米国においては)公開時に株式を売却できない。創業経営者が上場時に抜ける、というのは最悪のシナリオで、それでは公開すらおぼつかない。だから、ごく一部を売却し、残りのものはロックアップ期間というのが設けられ、場合によって異なるが、上場後最低6カ月(ケースバイケースだが)は売ってはいけないと決められる。これは目論見書に必ず記載されている。
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