布団敷きのバイトは「1組70円」「休日は聖地巡礼」日本在住11年"艦これ"オタクのベトナム人男性が語る≪日本の生活≫のいいところ

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ちなみに『艦これ』はアニメ化もされているが「あれはダメです。いったいなんなんだコレって思いました」と憤慨する。SNSなどを見るとアニメ版は原作ゲームとかけ離れた内容や、艦娘のキャラ改変といった理由で「提督」の皆さんに酷評されているから、ヒウさんも同じ気持ちを抱いたのだろう。

学生時代のアルバイトは布団敷き1組70円

ゲームだけでなく漫画でも「歴史モノ」が好きで、とりわけ『ヒストリエ』(岩明均)にのめりこんだ。かのアレクサンドロス大王の書記官エウメネスを主人公とした壮大な歴史ドラマなのだが……。

「終わらせてほしい……」

ヒウさんは念じるように呻く。やはり『ヒストリエ』ファンの僕もまったく同じ気持ちなので「岩明先生どうにか続きを」とふたりして祈った。『ヒストリエ』は作者の健康上の理由などから、長いこと休載したままだ。物語の続きを待ち望んでいる多くの読者の中にはベトナム人もいるのである。

ほかに漫画では「異世界モノ」を読むことが多いそうだ。主人公が時空を超えて、見知らぬ地(だいたい中世ヨーロッパをモチーフにしたファンタジーゲーム的な世界)に転移するというもので、「最近では『転スラ』ですかね。あのジャンルは作者がどれだけ異世界の構造を細かく作り込むかが大事だと思うのですが、そこが良かった」

と、『転生したらスライムだった件』を評するヒウさんは、ホーチミンシティで過ごした幼少の頃から、日本のアニメに夢中になって育った。『ドラゴンボール』『ワンピース』……。2010年代はアジア各地で日本のサブカル文化が親しまれ、一気に普及した時代だ。

「だから実際に日本の文化や暮らしを体験したいと思ったんです」

心配する両親を押し切り、高校を卒業すると合格したAPUのある大分県へ。

「最初はすごく不安でした。日本語はほとんどわからないし、ベトナム語の通じない環境で、はじめてのひとり暮らしで」

それでも、高速道路から見た大分の街と大学とがとてもきれいだったのをよく覚えている。

寮で生活しながら国際経営学部で学びつつ、探さなくてはならないのはアルバイトだ。両親からの仕送りはあったが、暮らしていくには自分でも働かなくてはならない。しかし、ぜんぜん仕事は見つからなかった。苦労したのは履歴書だ。

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