いまでは流暢な日本語でそう話すヒウさんは、艦船を擬人化したキャラ=艦娘(かんむす)を操って戦い、育てていくこのゲームに面白さを感じたが、すべての表記はもちろん日本語だ。ゲーム内の用語や会話がどういう意味なのか、ゲームを楽しみたいがためにひとつひとつ調べ、理解度が深まると同時に『艦これ』にハマっていった。
「なんていうんですかね。戦闘の熱さを感じられるんですよ。音楽もいいですし。イベントは実際に第2次世界大戦で起きた海戦を再現していて、そこで歴史を変えることもできる。もともと日本の歴史に興味があったこともあって」
“推し”の「艦娘」は「時雨」だ。 1935年に進水した駆逐艦がモデルになっているが、擬人化した姿は頭の左側の小さな三つ編みが印象的な、小柄でセーラー服姿の女の子。
「“呉の雪風、佐世保の時雨”って言葉があるんです。雪風も時雨も、大戦中にいろいろな戦いを経験したのですが、奇跡的に生き残った艦なんです」
ぜんぜん知らなかった。両艦は太平洋戦争でもとくに損耗率の高かった激戦に投入されまくり、そのたびに生還した「幸運の艦」として名を馳せたのだと、ベトナム人の若者に教えられてしまう(時雨は数々の戦いを潜り抜けるも1945年1月に米潜水艦によって撃沈された)。そんな戦史を知ることもヒウさんの楽しみになっていった。
大和ミュージアムを「聖地巡礼」するベトナム人
呉と佐世保はそれぞれ雪風と時雨の母港だが、いまではそんな港町を巡る「聖地巡礼」も盛んだ。もちろんヒウさんも訪れている。
「呉は2回、行きました。市が『艦これ』とコラボしているんですよ」
明治から戦時中にかけて軍港として栄えた呉市には、戦艦大和の博物館など往時を偲ぶ施設がたくさんある。そんな場所を巡るスタンプラリーとか、美術館での「艦これ」展、「艦娘」声優のライブなどが過去にも行われてきた。

「あとは横須賀にも行ったんですが、佐世保と舞鶴がまだなんです」
その計4か所が『艦これ』のとりわけ重要な聖地であるらしい。
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