
2026年の第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の放映権を、日本の地上波テレビ局ではなく、アメリカのネットメディアであるNetflixが獲得したことが、大きな話題となっている。
「2023年の前回大会では、地上波民放放送で大谷翔平の大活躍を見ることができたのに、今回は契約をしなければ見られなくなる。普通のテレビで見られなくなるとは……」と嘆く声が聞こえるが、今回はファンの視聴習慣が変わるというだけではなく、日本プロ野球のビジネスモデルを揺るがす事態にもなりかねない。
かつてMLB球団のオーナーはWBCの開催に難色
経緯を、WBCの設立にまでさかのぼって振り返ろう。
21世紀に入ってMLBには東アジア、中米、ヨーロッパなどから多くの選手が参加するようになった。この状況を受けて、2005年MLBのバド・セリグコミッショナー(当時)は、サッカーのワールドカップのような世界大会の創設を思い立った。
MLBは競合する北米四大プロスポーツ(NFL=アメフト、NBA=バスケットボール、NHL=アイスホッケー、MLB)のなかでは、ファンの年齢層が高く「オールドボールゲーム」といわれ、劣勢に立っていた。野球のマーケットを世界に拡大したいという意図もあって、この大会を企画したのだ。
主催団体としてMLBは、MLB選手会とともにWBCI(ワールド・ベースボール・クラシック・インク)を立ち上げた。WBCIは、興行権、放映権、ライセンス、スポンサー、フランチャイズなどすべての権利を有してWBCのビジネスを取り仕切る予定だった。
一方でMLB球団のオーナーはWBCの開催に難色を示した。MLBではFA権が確立して以降、スター選手は高額の複数年契約を結ぶようになったが、彼らがペナントレースと無関係の試合に出場して怪我、故障でもすれば、球団資産の損失だとして、選手の供出を渋ったのだ。同様の理由で、MLB球団はオリンピックの野球競技にも、選手の出場を認めていなかった。
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