しかし部下たちは白けていた。なぜなら、先週まで「いったん組織で決めたルール通りに仕事をしよう」と指示していたからだ。それなのにその後の1on1ミーティングでは、上司から次のような紋切り型の質問が繰り返された。
「この仕事を、どのような手順で進めていきたいかな?」
「そのような手順で進めると、どのような気分になるかな?」
「もし期待通りの成果が出たら、どのような気持ちになるかな?」
「その気持ちは、10段階のうちどれぐらいのレベルになるかな?」
若手社員は部長に"寄り添う"ために、その質問に付き合った。しかし本心では、こう思っていた。
「本来は、上司が部下に寄り添うべきだろう。なんで部下が上司に気を遣わなくちゃいけないんだ」
研修で習った「話し方」をそのまま使うリスク
「話し方」のスキルを上げるのは、とても難しい。スポーツと同じで、2~3日の合宿研修を受けたからといってスキルが身につくはずがない。学生時代にリーダーシップや、コミュニケーションのトレーディングを受けていた若者にとっては常識である。
そのため、若い部下たちが上司の言動を見て、「蛙化」してしまうのは、以下のようなパターンだと筆者は考える。
1つずつ解説していこう。
(1)話すタイミングが悪すぎる
研修から戻った上司が最初に犯す過ちは「タイミングの無視」だ。
たとえば月末の締め切りに追われている部下を捕まえて、「ちょっと30分、君の悩みを聞かせてくれないか」と言い出す。研修で「傾聴や質問の重要性」を学んだばかりの上司は、すぐに実践したくてウズウズしている。
上司と部下が逆であればいい。研修を受けてきた部下のために、上司が付き合うのはある意味、当然だ。しかし部下が上司のために付き合うのは、迷惑でしかない。
「今日中に提出しなければならない資料があるんですが……」
そう伝えても、上司は引き下がらない。
「いや、部下の考えを聞くことが最優先だと研修で学んだんだ」
「君も、日ごろから話したいことがあるんじゃないか? なんでも聞くよ」
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