なぜか離れていく若い部下たち…原因は上司の話し方? 《 若手がすぐ辞める》職場で上司が「忘れている」話し方の盲点
製造業のC部長は、ストーリーテリングの名手だった。創業者の苦労話、顧客の感動エピソード。熱い語りで部下を鼓舞するのが得意だった。多くの部下にも慕われていて、C部長が育てたマネジャーは10人以上にもなる。
社内だけではない。部長のトークスキルは社外でも評判が高く、取引先で1時間程度の講演を頼まれるほどの腕前の持ち主だった。
そんなC部長の下に、第二新卒で入社したDさんが配属された。Dさんは、論理的に物事を考えるタイプ。客観的なデータを重視し、冷静な判断を好む性格だった。しかしC部長は、ストーリーテラーとしての魅力を存分に発揮しようとした。
Dさんに新しい商品企画の重要性を話すときも、その背景から語りはじめた。
「そもそも当社が、この製品に関わったのは、バブルがはじけた1991年ごろだった――」
「1回目に開発が頓挫したのは、私が入社した1994年のこと。ちょうど30年ほど前のことだよ――」
「あのときはね、専務もまだ課長だった。お客様の数も少なく――」
3分ほど部長の話を聞いていたDさんだったが、途中でガマンできなくなった。話がうますぎて、頭に入ってこないのだ。そのため「結論から話してもらえませんか?」と言ってしまった。
「つまり、今回の新商品は、どの点が重要なのか。ポイントを整理して話してください」
しかしC部長は、頑なだった。
「君はまだ新人だから、わからないんだよ。まず私の話を聞きたまえ」
結局、Dさんが折れて部長の話を最後まで聞くことになったのだが、どうも頭に入らない。部長の情熱は伝わってくるが、結局どうしたらいいのか整理がつかないのだ。
どんなときも部長は結論を、なかなか言わなかった。そのせいでDさんはいつも他の先輩に「結局のところ、私は何をすればいいんですか?」「部長の話のポイントは何ですか? 簡潔に教えてください」と、質問する羽目になった。
ところが先輩たちも要点がつかめないようで、「俺たちに聞くな」「自分で確認しろ」と注意される始末。5カ月後、こんな上司のもとで働いていては“タイパが悪い”と考えたDさんは静かに辞表を提出した。
C部長は周囲に「アイツは、難しく考えすぎなんだよ」とDさんについて語ったが、実はC部長の話し方に問題があったのだ。
「何でも相談して」がしつこい上司
一方、「傾聴の押し売り」をする上司にうんざりする新入社員もいた。
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