ハーバードMBA修了生の4分の1が"職なし"、AI時代の大学に求められる「真正良心」の教育
では、どのような「良心」が求められるのだろうか。対人間を例にすれば、「人を見下さない心得」がその1つである。
近年、YouTubeやFacebookなどのSNSで、オピニオン・リーダーと見られている人たちが「バカだから●●」「▲▲する奴はバカだ」と人を安易にあざ笑っている。収入や地位だけでなく、対人意識にも格差が生じているようだ。「学歴厨」と呼ばれる人々が学歴や偏差値で人を評価する動画を配信し話題を呼んでいる。その基本は「人を見下す」スタンスである。
いくら勉強ができても、偏差値が高い大学を卒業したとしても、「バカだから」とすぐ口にする大学生を量産するような大学教育であってはならない。今や、目下の人が目上の人に対し、「上から目線でものを言うな」と指摘する時代である。お坊ちゃん、お嬢様も、見下す感覚を持ち続けているようでは、下から強い反発を招くことを認識しておくべきであろう。
「すぐに役立つ今どきの知識・技術」という点では、データサイエンス教育に力を入れる大学が増えている。新学部、学科、コースを設置するだけでなく、語学のように、全学共通科目として導入している大学も珍しくない。現代版「読み書きそろばん」の1つともいえる。
しかし、このような先端教育にも落とし穴がある。わかりやすい例を紹介しよう。
「職なしMBA」の増加が示す落とし穴
すでにアメリカでは、MBA(経営学修士)修了生の失業が増えている。例えば、ハーバード・ビジネススクール(HBS)の2024年修了生のうち、就職活動を行った約4分の1が就職先を見つけられなかった。過去10年間で最悪の結果だ。
彼らの主な就職先は、コンサルタント業など分析力をツールとして活用する職場であることが原因。すでに「分析」の多くはAI(人工知能)が担い始めた。
ここで挙げたHBS修了生の失業問題は、AI台頭による人員削減の象徴として受け取られている。はたして、コンサルティング業界を目指している一流大学の学生は、将来自分の身にも起こるかもしれないリスクを認識しているのだろうか。
この事実から近未来が見えてくる。今後、リーダーに求められる資質は、「洞察力」「創造力」「問題解決力」「コミュニケーション能力」、それらに関連する「交渉力」といった、いかにもアナログ的に見える人間ならではの能力である。こうした実務力に加えて、最も人間らしい資質として求められるのが、前述した広義の「良心」なのだ。
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