「こんな普通の田舎料理が」と批判されたが…。過疎の無人駅で売れ続ける「名物駅弁」。心無い声にもめげず《九州駅弁グランプリ》4冠の舞台裏

山中にある無人駅で、売れ続けている駅弁がある。
鹿児島県霧島市にある「嘉例川駅」は、1903(明治36)年に営業を開始した築100年以上の木造駅舎が印象的な駅である。鹿児島空港に近いが空港とはつながっておらず、1~2時間に1本の列車が運行するだけの山の中の静かな無人駅だ。
この嘉例川駅で、土日祝日だけ販売されている駅弁が人気を博している。駅弁の名前は「百年の旅物語 かれい川」。九州駅弁グランプリで4度のグランプリに輝いた大人気の駅弁だ。
前述の通り、駅の利用客は極めて少ないため、駅弁を買いに来る客のほとんどは“車”で訪れる。駅弁は基本的には列車旅のお供に買い求めるものであるが「車で買いにいく駅弁」というのも面白い。もはや、遠くから人を呼ぶ地域名物である。
駅弁を作っているのは地元にある「森の弁当 やまだ屋」。家族経営の小さな弁当屋で、代表を務める山田まゆみさんがひとりで始めた。現在は夫と娘も加わり、自宅前に建てたわずか数坪の調理場で朝4時半から弁当作りにいそしむ。
なぜ利用客の少ない駅で駅弁を売ることになり、どのように人気を集めていったのか、山田さんに取材した。

懐かしい素朴さの郷土の味
詳しい話の前に、まずは九州駅弁グランプリで4度頂点に輝いた弁当「百年の旅物語 かれい川」の中身から紹介したい。


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