「こんな普通の田舎料理が」と批判されたが…。過疎の無人駅で売れ続ける「名物駅弁」。心無い声にもめげず《九州駅弁グランプリ》4冠の舞台裏

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

それからは平日は総菜販売に加えて、「はやとの風」で予約を受け付けた分の弁当を販売するようになり、土日は今まで通り駅での販売をした。

「自分たちでこの観光列車を盛り上げようという気持ちを持った人たちで、車内販売でも熱心に宣伝してくださりました」

感謝状
「はやとの風」が2022年に運行終了した際は、客室乗務員たちから手書きの感謝状が贈られた。駅弁「百年の旅物語かれい川」は、観光列車の知名度や人気アップにも貢献したという(筆者撮影)

駅弁グランプリで6冠

すぐには軌道に乗らなかった駅弁だが、JR九州主催の九州駅弁グランプリでの受賞で、徐々に注目を集めるようになっていく。

第1回目の2004年には4位、その後2005年3位、2006年2位と1位ずつ順調に上がっていき、2007年にはグランプリに。さらに2008年、2009年もグランプリに輝き、3年連続のグランプリの快挙を成し遂げた。

その後、駅弁グランプリの休止などもあったが、2024年も再びグランプリを取得して4度目の頂点に輝いた。審査の際の社長からのコメントで「年を追うごとにおいしくなっている」と言われたのが、まゆみさんにとっての励みだ。

もう一種類の駅弁「花の待つ駅 かれい川」も作り、これが2022年、2023年の九州駅弁グランプリで2連覇を達成した。2つ合わせると6冠に輝いている。

「花の待つ駅 かれい川」は、この駅を訪れてくれる人を「花でおもてなししたい」という気持ちを込めて、花の色に見立てた郷土料理を詰めた。嘉例川駅では、春にはヤマザクラやソメイヨシノ、岩ツツジが一斉に咲き、ヒメジョオンなど野の花が路線を彩る。夏はヒガンバナが咲き、駅から少し足を延ばせばヒマワリや藤の花の美しい場所がある。

花を待つ駅かれい川
「花の待つ駅 かれい川」(1800円)。黒米は桜の花、卵焼きは黄色の特攻花、梅肉はヒガンバナ、白いサトイモは野に咲くヒメジョオンをイメージしているという。けせん団子の爽やかな香りが清涼感を添えている(筆者撮影)

最初はまゆみさんひとり始めた仕事だが、今では夫の文昭さんや娘さんと3人で取り組み、繁忙期にはアルバイトを頼んで乗り切っている。

手伝いを始めた頃、文昭さんは夜勤勤めをしていたという。夜勤を終えて帰宅した朝4時半ごろからそのまま駅弁作りに参加するように。「包丁なんて握ったこともない」タイプだったそうだが、今や弁当作りの主戦力だ。キヌサヤやバラン切り、ごはんの盛り付けは文昭さんの役割。嘉例川駅での販売も主に担当している。

次ページ「食べながら涙が出る。こんなお弁当があったんだ」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事