「こんな普通の田舎料理が」と批判されたが…。過疎の無人駅で売れ続ける「名物駅弁」。心無い声にもめげず《九州駅弁グランプリ》4冠の舞台裏
「うちの人が言うには、安いお弁当じゃないですよ。自分たちは250個とか作るけど、このお弁当を手にして食べる人には1個だから。それをちゃんと丁寧に作るようにしています」
盛り付けを終えた駅弁は、1人が見て、もう1人が最後にチェックして形を整えて……と丁寧に仕上げている。

お客さんとの心のふれあいこそがこの弁当のすごさ
この駅弁が特異なのは、お客さんの心の琴線に触れる弁当だということだ。取材に来た記者からは「食べながら涙が出る。こんなお弁当があったんだ」と言われたことも。感情を揺り動かされたのか、ハガキや手紙を貰うことも多いのだという。
「名前も書かずにおいしかったと。あと『おばあちゃんがごはんを作って待っていてくれたような思いがしました』とお手紙でいただいたこともあります。うれしいですよね。すごい励みになりますし」
お弁当を買いに来るのに、お土産を持ってくる人が結構多いのも印象的だ。駅弁を買いながら、世間話を交わす人も多い。
このお弁当から、懐かしい気持ちというか、人の温もりを感じるのだろう。
観光列車「はやとの風」は2022年に運休停止した。さらに、肥薩線は2020年の豪雨の影響で、今なお八代―吉松駅間が不通となっている。それでも、この駅弁を求めて今週末も、来週末も、山の中の嘉例川駅を訪れる旅人は絶えない。
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