「こんな普通の田舎料理が」と批判されたが…。過疎の無人駅で売れ続ける「名物駅弁」。心無い声にもめげず《九州駅弁グランプリ》4冠の舞台裏
「築100年と歴史のある駅で、今まであの列車に乗って旅をしてきた人たちは家でおにぎりを握って、おかずを詰めて竹の皮に包んで食べていたんだろうなと思いました」


竹皮の弁当箱は嘉例川駅の木造の趣ある雰囲気にぴったりだ。見ただけで昔懐かしい気持ちになり、旅情を高めてくれる。車窓から木々の緑を眺め、田舎のおばあちゃんの料理を食べる……観光列車「はやとの風」で過ごす時間を特別なものにしてくれる駅弁である。
批判をきっかけに、覚悟を決める
駅弁は、当初は「はやとの風」開業イベントでの販売のみの予定だったが、同年(2004年)4月より週末のみ嘉例川駅での定期的な販売を開始した。
てっきり好評だったからやることになったのかと思ったが、意外な言葉が返ってきた。
「お弁当に対する批判があるよって言われたんですよね。山田さん、このまま流しといていいの?って。そこで覚悟を決めて続けることにしました」
批判というのは、「ただの田舎の弁当」「こんなどこでも食べられるものを……」といったニュアンスのものだった。これらの批判は食べた人からというよりも、ただ見ただけで言われたものが多そうではある。一見ごく普通に見える素朴な家庭料理が、なぜ特別な駅弁に採用されるのかピンとこない人も多かったのかもしれない。
ラーメン屋での間借りをやめて、自宅前に小さな厨房を作ったのはまゆみさんの覚悟の現れだ。これで後には引けない。

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