「カネのためじゃない!」起業家を突き動かす「不合理な衝動」の正体とは 「幸福な失敗」を追い求め、リスクを厭わぬ心理の深層

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起業家
成功の見込みが低く、損失や個人的ダメージのリスクも高い。にもかかわらず、なぜ起業家は起業を厭わないのでしょうか(写真:adam121/PIXTA)
「起業家」という生き方は、多くの人にとって憧れの的です。しかし、その華やかなイメージの裏側で、彼らが想像を絶する精神的負担を抱えている事実はあまり知られていません。自身も起業家であり、メンタルヘルス研究者でもあるニール・シーマン氏が、起業家が抱える「メンタルヘルスの危機」に深く切り込み、具体的な事例と最新の研究データから解き明かした新刊『起業中毒:起業家の「加速する脳」を突き動かす刺激的かつ破壊的な衝動』からその内容を抜粋。ハーバード大学のユニークな授業から見えてくる「起業家の本質」に迫ります。

「型破りな反逆者」の衝動

起業家という生き方は、多くの人々にとって憧れの対象だ。革新的なアイデアを形にし、世界を変える。

起業中毒
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しかし、その華やかなイメージの裏側で、彼らが想像を絶するほどの精神的負担を抱えているという事実は、あまり知られていない。

本稿では、起業家精神の真髄と、彼らが直面する現実、そしてその動機付けとなる心のメカニズムについて深く掘り下げていく。

ハーバード大学で経営理論と社会心理学を教えていたマーク・ロバーツ教授のユニークな授業は、起業家の本質を浮き彫りにする示唆に富んでいた。

教授は学生に曖昧な課題を与え、筆者(ニール・シーマン)はその中で「子どもっぽい」行為を拒否し、コーヒーを飲みながら互いを知り合うことを提案したという。

ロバーツ教授は、こうした筆者の行動を「管理すべき反逆者」と評し、彼らは組織を去って新しいことを始め、成功することもあれば失敗を繰り返すこともあるが、「辞めたあとはいつもこのうえなく幸福だ」と述べた。

これは、起業家を突き動かすのが、単なる金儲けではなく「自分にとって意味のあることだけをやりたい」という衝動であり、その意味を共有できる人々と共にいたいという願望であることを示唆している。

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