起業は「罪」なのか? ディープテックのスタートアップ企業に寄せられる期待と不安を考える

テック系の起業家は、次から次へと立ちはだかる、そのステージに固有の課題を認識し、それに備える必要があります(写真:metamorworks/PIXTA)
近年、注目を集めているのがディープテック系のスタートアップです。ディープテックとは、科学的な発見や革新的な技術をベースに、国や世界が解決すべき課題に大きなインパクトを与えうる技術のことです。
地球環境問題や、制御されないAIへの不安が取り沙汰される中、技術立国ニッポンから生まれるスタートアップに期待が寄せられています。日本のテック系スタートアップはこの期待に応えられるのでしょうか。
筆者らはこの点を解明するために、世界最先端の学術論文をレビューし、現場に足を運んで調査を行ってきました。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の協力も得てディープテック系25社の経営者にインタビューを行い、その時々の経営課題と構想について語っていただいたのです。
その結果、テック系スタートアップ固有の課題が浮き彫りになりました。それは、シリコンバレーのIT系で生まれた「起業の手法」では、必ずしも対応しきれるものではありません。なぜ、従来の手法が通用しないのでしょうか。以下では、テック系に固有の難しさがどこにあるのかについて考えます。
推定有罪
「スタートアップは、無実が証明されるまでは有罪だ」
このように言い放つベンチャーキャピタリストがいます。「スタートアップのほとんどは失敗してしまうことを自覚せよ」というメッセージです。
投資家はそのことを知っているのですが、起業家たちはそれを知りません。たとえ、統計のデータを見せられても、「自分だけは特別だ。だから失敗するはずはない」と思うようです。
しかし、実は客観的なデータとしては9割が失敗します。それゆえ、起業家は「無罪」を主張するために「自分は(例外的に)成功する」と証明する必要があります。そうしなければ、必要な資金やサポートが得られず、本当に「有罪」になってしまうからです。
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