起業は「罪」なのか? ディープテックのスタートアップ企業に寄せられる期待と不安を考える

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第3の段階で評価を下すオーディエンスは、上場企業を対象とする機関投資家です。社会からの高い関心やシンボリックな製品よりも、確固たる売り上げや利益という実績に関心があり、安定性を維持しつつ成長できるかが評価されます。

起業家が置かれたジレンマ

それぞれのオーディエンスの期待に応えられなければ、次のステージに進むことはできません。その難しさは、たとえていえば、水泳(スイム)、自転車(バイク)、ランニング(ラン)の3種目を連続して行うトライアスロンのようなものです。

前のステージと同じような動きをしても、十分な成果を得られるとは限りません。

たとえば、第1の構想段階では、科学的ブレークスルーを学術雑誌に発表することに価値が置かれますが、第2の商業化段階では必ずしも喜ばれません。ベンチャーキャピタルは、知的財産の保護と競争上の優位性に重点を置いているので、通常は公開に対して消極的です。

多くの起業家が、前のステージの成功体験にとらわれてしまいます。しかし、その成功体験が強烈であればあるほど、前のステージのオーディエンスの価値観・規範・信念から抜け出せなくなります。次のステージでも同じような価値観・規範・信念で挑むのですが、異なるオーディエンスにはあまり響きません。

大学発のベンチャーがこの罠に陥りやすいようです。ずっと学術研究にいそしんできたわけですから、研究者としてのアイデンティティを失いたくないはずです。このアイデンティティは第1段階では有効なのですが、第2段階では必ずしも高い評価は得られません。

第1の構想段階で高い評価を得たスタートアップほど、第2段階で苦労するのはこのためです。

大企業でも、中央研究所や研究開発部門で活躍してきたビジネスパーソンが、同じような苦労をするという話をよく耳にします。

成功する起業家に共通する秘訣

それゆえ、成功する起業家はアイデンティティを進化させます。そのときにカギとなるのがビジネスモデルなのです。あるステージから別のステージへ上手に移行できているスタートアップにはいくつかの共通点があります。

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