起業は「罪」なのか? ディープテックのスタートアップ企業に寄せられる期待と不安を考える

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なぜなら、市場との対話を繰り返す中で、自社のミッションを具現化するビジネスモデルが設計できるようになるからです。それと同時にアイデンティティが明確になり、ずらしてはならない軸足も定まるのです。

その3:ピボットに備えて製品の詳細は語らない

軸足が定まればピボット(方向転換)も怖くはありません。高いパフォーマンスを上げる連続起業家は致命的なリスクをとらずに小さな実験を繰り返していきます。そのプロセスで、時にピボットが必要になることがあります。成功したスタートアップの約9割がピボットを経験しているという統計もあることから、ビジネスモデルづくりにおいて、ピボットは不可避なのです。

しかし、ピボットは「嫌われ者」です。イノベーションのプロセスというのは一直線に進むものではなく、どうしても迂回的にならざるをえないのですが、投資家の中にはそれが許容できないと考える人もいます。これまでの時間やエネルギーが無駄になるだけでなく、下手をすると「話しが違う」と見放されることもあります。

起業家にとって大切なのは、「想定内のピボットだ」と伝えることです。最初から、広がりを持った価値づくりをして修正の余地を作る。一貫性や継続性を強調して、利用者や投資家を柔らかいストーリーでうまく包み込んでつなぎ留めておく必要があります。

資金調達に成功している起業家は、意外にも、製品やサービスの具体的な機能の詳細に立ち入ることなく、実現したい世界を伝えて解釈に幅を持たせています。

その4:複数の顔を併せ持ちつつも統合する

しかし、実現したい世界と未知のビジネスモデルを語るのは容易なことではありません。ペイパルを立ち上げたピーター・ティールは「本当に成功している企業というのは、既存のカテゴリーにはまらない、事業内容を説明しにくい企業である」と言います。

世界を変えるようなスタートアップのアイデンティティは、必ずしも最初から理解されてはいませんでした。既存の枠組みに収まらないわけですから当然です。

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