起業は「罪」なのか? ディープテックのスタートアップ企業に寄せられる期待と不安を考える
以下、起業から成長ステージに沿ってその特徴を述べてみます。
その1:市場の選択では、飛び込む前に躊躇する
ビジネスモデルづくりにおいて、まず考えるべきは、最初の市場選択です。
一般に、高いパフォーマンスを上げる連続起業家は「チャンスあり」と見るや否や躊躇せずに飛び込むに違いないと思われがちです。しかし、実際はその逆で、意外にも慎重なのです。
どの市場で勝負するかによって、将来の売り上げや利益が大きく異なります。自らの専門知識と経験から見つけたチャンスというのは特別に感じられるのですが、その劇的な出会いに興奮してしまうと、ほかの市場の探索はおそろかになってしまいます。ほかの可能性を幅広く検討することなく決めてしまうのです。
しかしながら、高いパフォーマンスを上げる連続起業家は、複数の可能性を十分に検討してから最初の市場を選び出していることが学術的に実証されています。取材においても、拙著(『テック系スタートアップのビジネスモデル』)で紹介している12人の起業家は、みな慎重に市場を選んでいました。
その2:ビジネスモデルは短期・中期・長期の三段構え
資金調達に成功している起業家は、時間軸を見据えてビジネスモデルを設計します。まず、短期でもマネタイズできる着実なビジネスモデルによって、しっかりと収益を上げることができると示して信頼を勝ち取ります。
次に、スケールのきっかけとなる中期的なモデルを加えて将来性を予感させます。最後に、長期的な視野から本命とも言えるビジネスモデルづくりに取り組んで成長を加速させます。
先に述べた3つのステージのオーディエンスに応じて、時間軸を見据えてビジネスモデルを語るわけです。
一方、資金調達に成功している起業家でも、まだ迷いがある段階では、「これで勝負する」という覚悟もなかなか定まらず、さまざまなビジネスモデルを模索します。上手な模索は成功のカギなので、悪いことではありません。
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