「カネのためじゃない!」起業家を突き動かす「不合理な衝動」の正体とは 「幸福な失敗」を追い求め、リスクを厭わぬ心理の深層

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アメリカ初の起業家として広く認められているベンジャミン・フランクリンは、新聞発刊、図書館、消防団、病院の設立、遠近両用眼鏡や避雷針の発明など、その多才さと革新性で知られる。

しかし、現代の起業家の定義は、とかくベンチャーキャピタルから巨額の資金を調達し、スタートアップを立ち上げる若き天才というイメージに偏りがちだ。

実際には、事業の創設者は働き盛りの年齢であることが多く、事業の成功と存続期間は経験と正の相関関係にある傾向が見られる。

起業家はあらゆる分野に存在し、イーロン・マスクやリチャード・ブランソンのような著名人だけでなく、シンガーソングライターのニール・ヤングのように、自分の興味や価値観に従って行動し、イノベーションに熱中するタイプもいる。

起業家精神の真髄は「失敗」にあり

煎じ詰めれば、起業家とは現状を改善できると信じて疑わず、新しいアイデアやイノベーションを生み出す人々である。

彼らは問題を解決し、コミュニティに永続的価値をもたらすことに生きがいを感じる。

多くは落ち着きがなく、常識に逆らい、大言壮語で自信満々、攻撃的な物言いになりがちで、マインドは常にフル回転し過熱気味だ。

不確実性やリスクに対して平均以上の耐性を示し、意思決定の複雑な過程を楽しむ。

しかし、起業家としての道のりは感情の柔軟性や協調性が必要とされる一方、彼らは自立への欲求が強く、上司とうまくやることや命令を受けることに適応できないため、弱みのために起業を選ぶ者もいる。

自己中心的傾向、不安になりやすい、注意力散漫、競争心が強い、過剰な称賛欲求、強迫的な性格などが挙げられる。

そもそも、起業家になることは合理的な判断ではない。

新しいものを生み出す結果は誰にも予測できず、前例もない。新規事業は重大な責任、慢性的な不安、長時間労働、週末や祝日の消失を伴い、稼げる勝算もほぼない。

統計的に見ても目標達成の可能性は低く、野心的な試みの大半は失敗に終わる。起業家精神の真髄は「失敗」にあり、多くの者がこの生き方を難しいと感じ、競争から脱落する。失敗が悲劇的な結果を招くこともある。

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