「カネのためじゃない!」起業家を突き動かす「不合理な衝動」の正体とは 「幸福な失敗」を追い求め、リスクを厭わぬ心理の深層

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しかし、優れたアイデアを持つ者が乗り越える最大のハードルは資金調達だ。

起業家は事業を軌道に乗せるため、多忙な時間を資金調達に費やす。そのため金のことばかり考えているように見られがちだが、ほとんどの起業家は裕福というわけではなく、長年低収入に苦しむことが多い。

会社が成功しても負債を抱え、出資者や初期従業員が起業家本人より多く利益を得る場合も多い。

統計的に見ても、創業者は定職に就く人より収入の伸びが低く、ストレスは大きく、心身の健康問題を抱えやすい。

ベンチャーキャピタルとの複雑な関係

ベンチャーキャピタル(VC)は、アーリーステージ企業に多額の投資を行い、迅速な財務リターンを目的としている。

VCが重視する企業評価額は、ビジネスや製品と関係がない場合もある。起業家とVCは緊張をはらんだ関係にあり、多くの起業家はVCの条件の悪さから関わりを持ちたくないと考えている。

VCは事業戦略の意思決定権や複数議決権株式を要求することが多く、資金提供は「条件付融資」と表現されるべきだ。

VCから資金を受け入れるとデメリットが多いと多くの起業家は同意するが、「金が必要なとき、それが差し出されているなら、今すぐ受け取れ」という起業の原則もある。

独立心の強い起業家は、自主性を奪う資金調達モデルを避ける傾向があるものの、市場拡大や顧客獲得、仕事への評価を求めて、不利な条件でもVCからの出資を受け入れることがある。

この関係によってビジネスは成長するが、投資家のリターン要求により、望むよりも速いペースで成長を強いられ、ドーパミンレベルが急速に変動する問題につながることもある。

ニール・シーマン 起業家、メンタルヘルス研究者

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Neil Seeman

トロント大学法学部卒業およびハーバード大学公衆衛生大学院修了後、ネット起業家・メンタルヘルスの研究者として活躍。現在、トロント大学Dalla Lana School of Public Healthで教鞭をとるほか、公衆衛生やメンタルヘルスに関わる多くの機関でシニアフェローを務める。『日経アジア』、『トロント・スター』などにも定期的に寄稿を行うほか、メンタルヘルスに関する研究を『ネイチャー』などの一流学術誌で発表。これまでにメンタルヘルス関連の書籍三冊を共同執筆した。2011年に出版された著書『XXL: Obesity and the Limits of Shame』では肥満に関する公衆衛生政策について考察し、ドナー賞(カナダで公共政策分野の優れた本に授与される賞)の最終選考に残るなど、高い評価を受けた。

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