そこからはスピーディーだった。10月には正式に「TOO」として発足、役職定年を迎えた人の中から人事部の推薦で全国の支店に1~2名を任命するようにした。
発足から10年、TOO活動は育成プログラムまでできあがり、すっかり社内に定着している。
どんな人がTOOメンバーになるのか?
TOOの主な役割は、社内の若手や管理職の気軽な相談相手になること。TOOは役職ではなく、あくまでも「お節介活動を推進する人」ということなのだが、お節介を上手に焼くにはそれなりの資質と能力がいる。お節介役の焼き方が下手だと、逆恨みになったり、社内の雰囲気が悪くなる可能性もあるからだ。
そこで、同社では自己推薦ではなく、人事部の推薦でTOOメンバーを選定することにした。若手からマネージャー層まで、幅広く相談が受けられる存在となると、やはり役職経験者がいいだろうということになり、これを選定の必須基準とした。
そして、人柄とコミュニケーション力、お節介が好きそうかという点も大事なポイントになったという。
これらのことを踏まえ、以下3つのことが決まっていった。
① TOO専任ではなく、必ず現場の業務と兼務にすること
② TOOは支社長直轄とする
③ キャリアサポート室との連携を取ること
キャリアサポート室は人材育成を専門にする部署のため、ここと連携を図ることで現場から社員の成長を支えることを目指した。
当時同社には、自分がどう進んでいいのかわからないけれども助けを求めることもできずにいる「泣かない迷子」が多くいた。支店の統廃合やシステムの急激な変化などでマネージャー層も日々を乗り越えるのに必死のため、若手への支援が手薄になっていた。そこを埋める役割としてTOO活動に白羽の矢が立ったのだ。
TOOメンバーは他の社員と同じように現場で働いているため、現場の様子もよくわかっている。経験も豊富なため、業務上の問題を聞き取り、アドバイスできるだけのリソースも持ち合わせている。
人事視点で見たときに、TOOにはスキルアップをサポートするコーチのような存在となりうるだけでなく、社内を俯瞰(ふかん)し、組織内のリソースの活用を促すコーディネーター的な役割も担えそうなポテンシャルがあった。
だがこれらを行うためにはTOO自身のスキルも必要だ。「上から物言う役職勇退者」という存在では、煙たがられて終わってしまう。
そのため、キャリアサポート室はTOO候補者のための研修制度を作り上げた。人事部からの推薦でTOOに選ばれた人は全員この講習を受けなければならない。

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