社内でじわじわ存在感、“となりのお節介おじさん・おばさん”の底力。サントリーが育てる「愛のあるお節介」、組織に息づく支え合いの文化

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「時間が解決することもあるけれど、わからないことはわからないって、新人になったつもりでどんどん聞いていかないとダメだよ、とアドバイスすることもあります」(嶋村さん)

バーやカフェを作って話を聞く

任命を受けて1年のTOO新人、サントリー株式会社近畿営業本部・営業企画部の石原裕三さんは、中途採用の社員に目を配っているという。

「頑張らなきゃいけないという気持ちは強い人が多くて、でも、転職してきているのですから当然わからないことも多い。異業種からの転職なら、商品のことも覚えないといけない。

自分が新人研修を担当することがあるのですが、最近は中途採用の人たちにも声をかけて、新入社員と一緒に聞ける場を設けるようにしています」(石原さん)

TOOには横のつながりもある。全国のTOOメンバーが顔を合わせる会合を年に数回行っている。TOO新人の石原さんも、ここで先輩TOOに相談できるのは心強いようだ。

「最近だと、メンタル不調の方への対応について聞けたのが良かったです。専門家へのつなぎ方などを聞けましたんで」と石原さん。先輩たちの取り組みを参考に、もっと気さくに話せる場を作ろうと、定期的に実施してきた面談活動のほかに、社員が気軽に寄れるバーを社内でやってみることにした。

午後5時半、エプロンを着けた石原さんが社内に設けたカウンターに立つと、ぽつぽつと人がやってくる。開催頻度はそれほど多くはなかったが、この活動は好評だった。

ところが、開催後に実施した定期面談で嬉しい苦情の声が上がってきた。「この時間だと、業務用セールス(飲食店や外食チェーンなどを担当している営業)が参加できない」という声だった。

そこで、今年1月からはTOOバーに加えて昼休みに開くTOOカフェも始めてみることに。バーとカフェをそれぞれ毎月1回ずつ定期的に開催するようにしていった。

石原さん
エプロン姿も定着してきた石原さん。バーはついつい立ち寄りたくなる雰囲気(写真:サントリー提供)

こうして臨機応変に即実行に移せるのは、現場で実際に働くTOOメンバーに活動の内容が委ねられているからだろう。定期的な開催から半年、カフェとバーには少ない日でも20名、多い日で40名ずつくらいが来るようになってきた。

今はもう定年退職で会社を退いているTOOの発起人は、後輩たちにこんな言葉を残している。

「根幹は、愛情をもって人を育てること」

愛がなければすべては意味がないだろう。会社への愛、同僚への愛、上司への愛、後輩への愛。彼らの「お節介」という名の愛が、今日も会社を包み込む。

宮本 さおり フリーランス記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事